ホテル出発が毎日30分づつ早くなり、今日は7時半出発で、ウェイク・アップコールが6時になる。早起きは苦手なので厳しい、団体旅行のつらいところだ。
ノイシュヴァンシュタイン城へは100キロちょっと。

ノイシュヴァンシュタイン城

バスの中では添乗員がノイシュヴァンシュタイン城について分かり易く説明してくれる。
この地方のバイエルン国王に18才で即位したルートヴィッヒ2世は政治のことより芸術に熱中、殊にワーグナーに血道をあげ、政治にも口をはさませる始末で、幕閣にワーグナー追放を迫られます。
ペットを失った王は次には城の建設にとりつかれ、中世の騎士に憧れていた彼は19世紀後半の世に時代錯誤にも豪華華麗な山城を建て、国庫を空っぽにしてしまいます。その城がノイシュヴァンシュタイン城です。

政府は彼を精神病ということにしてシュタンベルグ湖畔のベルグ宮に移してしまいます。散歩に出かけた王は付き添いの医師グッテンと共に溺死しているところを発見され、事故死なのか自殺か他殺か不明のままになっています。1886年6月のことで、享年43歳。ルートヴィッヒ2世がお城で暮らしたのは僅か100日あまり。お城も3分の1しか完成していないのです。
でも、21世紀のバイエルンの民はこのスキャンダルに塗れた王のお陰を蒙っているのですから歴史は皮肉です。

バスがだんだんとアルプスの麓の近づいてくると、緑の草原や牧場が広がり、真っ青な水を湛えた湖が見え、遠くには、雪をいただく険しい山が見えてくる。
白い雪、灰色の山、緑の森と草原、青い湖などなど、絵心を誘う風景が目の前に展開されるが不調法の自分には絵の素養がない。

やがてバスはノイシュヴァンシュタイン城の麓に着く。ここからミニバスで5分ほど上ったとろがバスの終点。添乗員が、ここから7、8分歩いた処にノイシュヴァンシュタイン城を見る絶好の場所がありますと言われて、皆の後ろについて行くと100mほどの断崖に吊り橋が架かっており、おそるおそる中ほどに進むとノイシュヴァンシュタイン城の全景が目の前に見える。

白い壁と黒い屋根、鋭く立つ尖塔、遠くに青い湖を配し、名前の通り白鳥が飛び立つような優美な姿を見せている。気の合った新婚さんと写真をとりあって、もとの処に戻りノイシュヴァンシュタイン城の正門へ。
正門の前ではたくさんの人が入場の時間待ちをしていて、イギリスの紳士が日本人とみて話しかけてくる。彼は2年ほど前、環境問題かなにかの会議で東京に来たそうだ、スピーカーとして講演もしたらしく、グレイト!と言ってやると嬉しそうだった。大阪からだと言うと、京都がよかったという返事。

お城の中に入り、召し使いの間。階段を上って、王の玉座がある謁見の間、舞踏会の間、王の寝室や居間、食堂などを見て回る。
後は40分後に麓の土産物屋で再集合することで解散。早めに歩いて降りていると添乗員が声を掛けてきて、添乗員の世界や旅行業界の話になる。旅行業界はもともと採算が厳しくサーズや戦争で赤字が続いているが、親会社の体面もあり解散せず、従業員は子会社に移しコスト削減を徹底し、頑張っているんだそうだ。