周りがざわざわして5時半過ぎに目を覚ます。腰痛持ちにはハンモックで休むのははなはだ心地良く熟睡できたが、一睡も出来なかった人もいたようだ。

ラトンシート島キャンプは目の前にエンジェルフォールが見える絶好の場所にある。6時半ころには空がくっきりと晴れてきて滝の上部が顔をだし、しばらく見つめていると雲や霧が徐々に徐々に晴れてきて滝の全容が姿を現してきた。身震いするほど美しい。

さて、エンジェルフォール、ロマンチックなネーミングだが天使に由来するものではなく、この滝を発見した元カナダ空軍のパイロット、ジミー・エンジェルに因んで彼の名前を付けたものである。

1930年頃からギアナ高地に金やダイヤモンドが産出することが知られて一攫千金を狙う山師たちが集まってきたが、ジミー・エンジェルもその1人である。

1935年にアウヤン・テプイ周辺をセスナで探索していて偶然に頂上付近から流れ落ちるこの巨大な滝を発見したのだと言われている、さぞかし驚愕、目を見張ったことだろう。

エンジェルフォールトレッキング

8時過ぎにラトンシート島を出発、チュルン川を渡るとトレッキングの始まりである。

まずは小手調べのようにごつごつした石ころだらけの窪みを渡る、すこし平べったい石が踏み石のように並んでいるが、表面がつるつるしてバランスをとるのに一苦労。次は小川、添乗員によれば乾期には単なる窪みなんだそうだが、今は結構流れがある。履き捨てにする積もりで安物のスニーカーにしている自分はザブザブと渡ったが、高価なトレッキングシューズの皆さんは躊躇されている様子である。最後は決心されて水の中へ。

で、いよいよジャングルウォークである。鬱蒼と茂って薄暗いジャングルに分け入って行く感じだが、最初のうちは人が踏み均したところを進んで行くので木の幹に作られた蟻の巣やあちこちに咲く花をカメラに収めたりして余裕である。

しばらく進むと、木の根が地面を四方八方に這い、岩がごろごろ転がった道になってきた。 木の根が地面を這っているのは、ここでは地下数十センチのところに植物に有害な鉱物の地層があり、根を地中に張ることが出来ないのだと聞いたことがあるが本当かどうか分からない。

根っことごろごろ岩に足を取られないように気を付けていると前の人がだんだんと離れていく、皆さん、自分のペースで歩いているのでそれぞれずい分間隔があいているようだ。1時間半も歩いたと思ったころ道案内の立て札が見えてくる、道は間違っていないようだ。

この後は険しい坂道となり、根っこも岩も一段と大きくなってくる感じで膝ががくがく言い始める。しばらく歩いてまだかいなと、思っていると右前方が少し明るくなってきて林の隙間からエンジェルフォールが見えてくる。

2~3枚写真を撮って、さあ元気をだしてと思いながら歩き出した途端、踏んだ石に足が滑って腰から崩れ落ちる、腰に提げていたベープは紐が切れて2mほど飛んでだ。

やったなと思っていると、丁度引き返してきていたデビィッドさんが助け起こしてくれ、屈伸してみても痛みがない。カメラも大丈夫のようだ、助かった!!!

さらに険しい坂道を登ること10分、大きな岩場が前にせり出している感じのライメ展望台に到着する。

エンジェルフォール

岩の上にあがると、真正面にエンジェルフォールがある。上空は真っ青に晴れているのに麓から湧き上がった雲で滝の上部は隠されている。10分ほどすると、滝の上部では灰色の雲に囲まれた青い空と黒い絶壁が幽かに見え始める。瞬間、鳥肌が立つほど神秘的である。

さらに20分ほど待っていると雲は完全に晴れて、落差979m、世界最長のエンジェルフォールの全体が見えてきた。滝はあまりにも長いために水流は途中で霧になってしまうので滝つぼがないのだと言う。

紺碧の空、屏風を開いたような赤黒い絶壁、その頂上から流れ落ちる979mもの白い水流、神々しい。

小1時間ほどエンジェルフォールを堪能した後、ラトンシート島キャンプに戻って昼食。皆さんジャングルウォークには散々苦労させられたが、エンジェルフォールを堪能して苦労の甲斐があったと満足げである。

2時前にラトンシート島を出発、帰路に着く。途中から豪雨に見舞われ、青いビニールシートを全員で被る。で、何にも見えない。