夜半から降り続いている雨は出発時間になって少し小降りなり、車の屋根に積んだ荷物にビニールシートを掛けて出発する。
今日はグラン・サバナをドライブしてロライマ山へのトレッキングの基地となっているパライ・テプイに向かうことになっている(もっとも、我がお手軽ツアーはトレッキングではなくヘリコプターでロライマ山の頂上に下りることになっているのだが・・・・)

1号車に乗り込むと、斜めにロープが張ってある。さんざん不平やら非難がでたので、車が揺れる時にはロープを掴めるようにしたわけだ。いかにも思いつきといった感じだが、緊急策としてはこれが精一杯らしい。ただ、運転には気を使っているらしくロディオのような揺れは殆んどない。

パンアメリカンハイウェイ

1時間半ほど走って、例の滑走路だけのルエパ空港に戻り、ハイウェイ10号線に乗る。

アラスカのフェアバンクスからアルゼンチンの南端、ティエラ・フェゴに至る南北アメリカ大陸を結ぶハイウェイはパンアメリカンハイウェイと呼ばれているが、コロンビアからカラカス(ハイウェイ1号線)を経由してブラジルに通じるハイウェイはこのパンアメリカンハイウェイの支線とされている。

南米大陸でのパンアメリカンハイウェイ本線はコロンビア、ペルー、チリなど太平洋側を走り、アルゼンチンに至っており、ペルー旅行でリマからナスカに行く時に走るハイウェイはこのパンアメリカンハイウェイ本線の方である。

支線はコロンビア~ベネズエラのハイウェイのほかにもアルゼンチン~ブラジルのハイウェイなどあちこちにあるようだ。地元ではそれぞれのハイウェイ1号線とかハイウェイ10号線などと呼ばれ、パンアメリカンハイウェイという意識はあまり無いらしい。

余談はともかく、さんざん悪路に苛められた後で舗装道路を走るのは快適である、ルエパから20分ほど走ったところでトイレ休憩。

売店でギアナ高地の観光MAPを見ていたら添乗員が全員に買い与えてくれる、旅行代金が結構高いだけに予備費がふんだんにあるらしい(秘境ツアーは旅行社が限られ競争がないので良質な旅行と称してベラボーな料金設定をしている)

しばらく走っていると左手にテーブルマウンテンが見えてきて写真ストップ。
ガイアナ国境に連なる7つテーブルマウンテンのうちの一番手前がトラメン・テプイで尖った形をしている、隣の平べったいのがイル・テプイらしい。いよいよテーブルマウンテンが身近になってきた感じである。

カマの滝

11時少し前にカマ村に着き、食堂に荷物を置いてカマの滝の見物に出かける。広場の裏手から一旦、ハイウェイに出て川を渡って滝の反対側に回り、ちょっと坂道を上った所に滝に下りる崖道がある。

THE LOST WORLDによればカマはペモン族の言葉の‘カマック’からきており、掴むという意味なんだそうだ。
言い伝えでは、滝の近くで遊んでいた少年がラトという水の精に攫われて水底に隠されてしまうが、一人の老女がバルバコスという雑草で水に毒をもり、少年を助け出したのだそうだ。

イボリボにしてもカマにしても水にまつわる伝説が多いのはペモンの人々の生活が川と密接に関わっていること証と言えそうだ。
滝の落差は約64m、2条の滝が流れ落ちる様は雄大であるが、昨日、チナクの滝を見た後では、ま、それなりかといった感じになる。

広場に戻り、小高い丘から滝を上から眺めた後、昼食。ペモン族の主食、カサベを辛っらいスープに浸して味わう。

テプイの谷

1時にカマ村を出発、20分ほど走って、テプイの谷と呼ばれるビューポイントで写真ストップ。晴れていればイル・テプイ、ユルアニ・テプイ、クケナン・テプイ、ロライマ山など7つのテーブルマウンテンが眺められると言うことだが、残念ながら雲に覆われている。(ウヴェさんのCDに晴れた日に撮った写真があったので、GALLERYに載せます、ご覧下さい)

ユルアニの滝

テプイの谷で20分ほど過ごした後、今日の最後の観光のユルアニの滝に2時過ぎに着く。

ユルアニの滝は落差は10mもないが濁流が豪快で、丁度、イグアスの滝の悪魔の喉笛と同じような迫力である。滝の上流をみると、草木を押し流し洪水が押し寄せてくる感じで、源流のユルアニ・テプイに大量の雨が降ったことが分かる。

迫力を感じさせるもう一つは水の色である、水の色がコーラのように赤茶けており、離れたところからは黒く見える。これはテーブルマウンテンに堆積した腐植質に含まれるタンニン酸のためで、テーブルマウンテンから流れ出す水に大量のタンニンが含まれているためだそうだ。

ところで、アポンワオ川やユルアニ川などギアナ高地の東部を南に向かって流れる川は何処に行き着くのだろうと地図を眺めていたら、ブラジル国境に近いサンタ・エレナの北西の辺りでクケナン川と合流、カロニ川となって北方に旋回してアウヤン・テプイやカナイマ湖の側を通り流れ流れて、あのプエルト・オルダスで見たようにオリノコ川に合流してカリブ海に注ぐことが分かった、なんとも壮大な自然の営みである。

パライ・テプイ

サンフランシスコ・ユルアニ村で休憩の後、チバトンの道路に輪を掛けた悪路に1時間あまり揺られて、4時半過ぎに今日の宿パライ・テプイに着く。

パライ・テプイの宿はバンガロー風の小屋で1軒に2部屋という構成になっている。旅行の前には聞かされていなかったし、直前の添乗員の説明は聞き流していたのだが、部屋に入ってみると電気がない、シャワーも水しか出ないようだ、どうなることやら・・・・。

荷物を置いて外に出てみると豪雨になっている。トレッキングの人たちが自炊するためらしい柱だけの小屋で雨宿りをしながらロライマ山の方向を眺める。旅行社のパンフレットにはロライマとクケナンがすぐ目の前と書いてあったが、何も見えないので真偽のほどさだかでない、早々に部屋に引き返す。

5時半、宿から少し上った丘の上のペモンの部落で夕食。食後、明日のヘリの順番のくじ引きがある。ヘリは5人乗り、クジ運が悪いのは何時ものことで、今回も最後っ屁の9番を引く。旅行社のパンフレットでは添乗員もガイドもヘリには同行しないと書いてあったが、添乗員が1番機に乗るのだと言う、何のことだか良く分からない。

部屋に戻ると、真っ暗である。登山やトレッキングの人は電気の明かりのない小屋とかテントでの宿泊はごく当たり前のことかもしれないが、お手軽ツアーしか知らない者には電気のない泊まりは勝手が分からず、不安この上ない。

おそるおそる懐中電灯の明かりでカヤを張り、着替えの用意をして休む。