入国

早朝の5時半前にラパス空港に着く。標高4061m、世界で一番高いところにある空港である。

入国審査の列に並んでいると、すぐ後ろで男性がよろよろっと倒れた。60才くらいの別のツアー(JTB?)の客である。空港の係員がすばやく駈けよって様子をみているが、どうやら大丈夫らしい。添乗員もやって来て車椅子で別室に運び、酸素吸入を始めるようだ。早速、高山病の洗礼を受けた感じでちょっとショックである。男性は飛行機から降りてグループの皆に遅れまいと急ぎ足で入国審査場に着いたのではないだろうか? ここは高所、ゆっくり、ゆっくりと言い聞かせながら進む。

心配していたロストバゲージもなくバスに乗り込んで、ラパスの観光が始まる。ガイドさんはビベル、ドライバーはウゴウさんである。添乗員の紹介ではビベルさんはダンサーで南米3大祭りの1つ、オルーロのカーニバルでは見事なダンスを披露したそうだ。

さて、今回のツアーの参加者は現地参加の1人を含めて16人、アツアツのカップルが2組、卒業旅行の2人(後で聞いたところでは、k大の化学系の院のリケジョ、実験で忙しくアルバイトもできないので旅行費用は親に借金しているそうだ)と、あとは、30台とおぼしき女性陣が中心である。

チェ・ゲバラ像

空港の取付道路から高速に入るところで、車の右手の窓からチラッと前衛的な像が見えてきた。添乗員の話では、現代アートのチェ・ゲバラ像で廃車の自動車部品などで作られたものだそうだ。チェ・ゲバラと言えばカストロと並ぶキューバ革命の英雄であるが、映画やドラマになったりして、今なお世界の多くの人々に慕われている革命家である。革命がなった後、政府の閣僚などを務めるがソ連を批判するなどしてキューバを離れ開放革命の道に戻り、最後はこのボリビアのサンタ・クルスの近郊で捕らえられ銃殺される、39才だったそうだ。

パチャママの展望台

15分ほどは走って道路脇の土手に作られた見晴らし台(トーテンポール状のパチャママの彫刻が立っている)で写真ストップ。土手に上がるとすり鉢のような斜面に赤茶けた建物がびっしりと並んでいて壮観、だが、この斜面の部分は低所得者の住居で、富裕層はすり鉢の底の部分に住んでいるのだそうだ。

土手を上がっていくと、すぐ目の前をロープウェイが走っている。すり鉢の上と底を10分ほどで結んでおり、渋滞解消のため2年前に出来た、明日我々も試乗するそうだ。

正面の遠くには雪を被ったワイナポトシが見える、高さは6088m、後ろにはイリマニ山が見える筈だが、今は雲に隠れて見えない。ボリビアには6000m級の山がいくつもあって、1番高いのは6542mのサハマ山、ウユニ塩湖に行く途中で天気がよければちらっと見えるらしい。

ムリリョ広場

すり鉢の底に着き、ムリリョ広場でバスを降りる、広場の真ん中にムリリョの像が立っている。

ムリリョと言えば、甘美な感じの聖母で有名なスペインのバロック期の巨匠が思い出されるが、あちらは確かエステバン・ムリリョ、こちらはガイドさんによればペドロ・ドミンゴ・ムリリョで、ボリビア独立運動の先駆となった人である。毎年、7月16日にラパスの中心部をトーチに火を灯してパレードが行われるが、これはムリリョが処刑に際して残した言葉、‘私が灯したトーチは誰も消すことは出来ない’にちなんでいるとのこと。で、実際にボリビア(当時はアルト・ペルーと言った)が独立したは15年後、南米各国を開放したシモン・ボリバルが主導して達成された。

ボリビアの国名、通貨のボリビアーノは シモン・ボリバルにちなんでいるのだそうだ。
広場の南側に大聖堂と大統領官邸、東側に国会義堂が建っている。

先ずは大聖堂、鐘楼が両側に立ち真ん中に小ぶりなドームが乗っている。信者がお祈りをしているのでカメラはNGと言うことで内部に入る。翼廊がない身廊と側廊だけのシンプルな構造で内陣も簡素な装飾である。ガイドさんによればネオクラッシック様式なんだそうだが、落ち着いた雰囲気である。側廊をぐるっと回って 大聖堂見物はおしまい。

隣は大統領官邸、塀もなく道路に面していきなり官邸の入口となっているので不用心この上ないと思われるが、どうなんだろう。ガイドさんの話では官邸と大聖堂は地下で結ばれており官邸で何かあれば大聖堂に逃げ出せるそうだ。だが、国家の最高機密を皆が知っているなんて、どうなのと云う感じである。

現在の住人はモラレス大統領、ボリビアで初めての先住民出身の大統領である。モラレス大統領は国際的な公式の場でもノーネクタイで民族衣装をあしらったジャケット姿なんだそうだ。

官邸前の道路に車がたくさん駐車しているし、衛兵のほかにスーツ姿の職員が何人も入口付近にいるので大統領が官邸にいるかもと言いながら、添乗員がモラレス大統領はこんな人だとスマホを開いていると、人の動きが急に慌ただしくなった、大統領が車に乗り込んだらしい。慌てて車に駆け寄るが、モラレス大統領をカメラに収める幸運に恵まれたのは1人だけだったようだ。

続いて、広場の東側には国会議事堂、ボリビアの国会は上院と下院の2院制で任期は5年、おととしの選挙で大統領の与党が2/3の多数を占めているそうだ。

この国の国名は何と言うか知っていますかと、ガイドさんに問われて、誰かが‘ボリビア多民族国’と答えて正解する。モラレス大統領になってボリビア共和国から変更したのだそうだ。ボリビアにはアイマラ族、ケチュア族など36の民族がいるらしい。

議事堂正面には3本の旗が掲げられていて、ガイドさんによれば左は先住民のアイマラ族の旗、真ん中がボリビア国旗で赤、黄色、緑の3色旗である。赤は独立で流された血、黄色は鉱物資源、緑は森林資源を表すとのこと、右はボリビアが加盟している連盟(ボリバル同盟?)の旗らしい。

この国会議事堂にはちょっと変わったものがあります、上の方ですが何だか分かりますかと言われて、よく見ると時計の文字盤が逆と云うか、左回りになっている。この意味は南米では北半球と違って太陽は右から左に動くように、南は北半球の発想に隷属しないと言っているのだそうだ。

この後、広場の壁に取付られたボリビア各県の地図、ボリビアの中心0m地点を示すプレートなどの説明を聞いて15分ほどのフリータイムとなる。大統領官邸の衛兵、ビルの谷間からすり鉢が覗けるビューポイントなどで写真を撮ってムリリョ広場見物はおしまい。

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