テンペレートハウス(温帯温室)
温帯温室に行く途中、パームハウスの傍のウオーターリリー ハウス(睡蓮温室)に寄り、赤、紫や白っぽい色などの可愛らしい睡蓮の花をちらっと見た後、テンペレートハウスに向かう。

端正に整備された生垣や日本から贈られた桜を見ながら5~6分ほど歩いていると桜並木の向こうにガラスの建物が見えてきた、テンペレートハウスである。桜並木を進んでいると草取りなどをしているスタッフがいる。こうしたスタッフの地味な作業により植物園は支えていることのようだ。

で、テンペレートハウス(温帯温室)はパームハウスより10年ほど後にできたビクトリア朝のガラス構造の温室、パームハウスの2倍の広さがある。パンフレットによれば今秋からリノベーションに入るために休館になるそうだ。

入口の脇のパネルを見ると、中国からの茶、オーストラリアのユーカリ、西アフリカのゴクラクチョウ、世界で最も珍しいアフリカ原産のエンセファラルトスなど貴重な樹木があるらしい。
室内に入るとヤシ類が茂ってパームハウスと変らない感じである。中でも真ん中で他を圧するように天井まで伸びているヤシがある。これが入口のパネルにあった室内のヤシでは世界一と言われるもののようだ。Chilean wine palmという名前の通り、樹液はワインやパンケーキに使用されるらしい。1843年に種から育てられたが大きくなり過ぎて他に移されてしまった。現在のはその種から育てたもの。
通路に沿って少し歩いてから、2階バルコニーに上がる。2階から見てもチリワインヤシが飛びぬけて高いのがよくわかる。バルコニーを一周した後1階に下りてぶらぶらと歩いていると、温室の端っこにトウモロコシを縦にしたような花をつけている(盛りを過ぎてちょっとみすぼらしい)木がある。オーストラリアのスイカズラ科のバンクシャーで、オーストラリアの原住民の食べ物だったようだ。この風変わりなトウモロコシのような花は何百もの個々の花が集まったもの。

(パネルにあったエンセファラルトス、アフリカ原産のソテツ(オニソテツ)で世界で最も稀少な植物らしい。黄色のコーンのにしような実をつける雌雄異株、キュウではメス木を100年も待っているそうだが、メス木は発見されていない、野生では絶滅しているらしい。素通りして見つからなかった。
もう1つは極楽鳥、どんな花を咲かせるのか気になったので帰国後、ネットを漁ってみた(ネットフリーの画像があったので載せています))

ポゴダ、勅使門など

テンペレートハウスを出て、さて次はと思っていると遠くに仏塔のようなものが見える。
淡い緑をふきだし始めた木々、濃い緑の絨毯を敷き詰めたような芝生、贅沢な気分に浸かりながら進んでいると仏塔がしだいに大きくなってきた、ポゴダと言われる建造物である。
ポゴダ・・・中国の仏塔風の8角形10層の建造物、高さが50mある。建造されたのは1762年、当時、キュウの監督官であった中国の建築や文化に造詣が深いチェンバースという人が設計した。キュ-ウガーデンの始まりは1759年と言われているので、ほんの初期からこのポゴダはキューガーデンに景観を添えているようだ。頂上まで253段あるらしいが、現在は閉じられている。

勅使門
ポゴダから少し歩いたところに日本庭園があって、一段高いところ勅使門がある。明治43年の日英博覧会に出展された後、キューガーデンに移設されたもの。説明文によれば西本願寺の唐門の5分の4のスケールのレプリカだそうだ。20世紀の初め、英国人にとって極東の島国の異文化は興味深々、博覧会の後も展示品を残しておきたいと言う気持ちが強かったようだ。

treetop walkway(トリートップ・ウォークウエイ…木の上の散歩道)

近くのパビリオン レストランで軽い昼食の後、トリートップウォークウエイに上る。高さが18mもあるので階段を上る元気は残っていない。でもって、エレベーターの厄介になる。歩道橋の長さは200mほど、ロンドンの4月末は
木々がまだ目覚めていない。

コーヒーが飲めなくなる?

歩き疲れて芝生に腰を下ろしてパンフレットを眺めていると、毎日飲んでいるコーヒーが危機にさらされていると言う記事がある。
キューの新しい研究によると世界中のアラビカコーヒーは70年以内に消滅すると言うショッキングなことになるらしい。
キュウガーデンとエチオピアの研究者との共同研究によると気候変動だけでもアラビカコーヒーは今世紀末を待たずに消滅するそうだ。

世界のコヒー農園で栽培されているアラビカコーヒー種は限られた遺伝資源によっており、気候変動や病気に対応するためには柔軟性がない可能性が高い。他方、野生のアラビカ種はそれなりの遺伝的多様性があるのでコーヒー産業の持続可能性にとって重要であると考えられている。
その野生のアラビカ種だが、研究者達がコンピューターモデリングを使用して野生のアラビカ種の地理的分布の経時変化を予測しており、2080年までには最も良くて65%、最悪の場合は99.7%消滅するとのこと。

論理的な結論はアラビカコーヒーの栽培は気候変動に強く影響され、多くのケースでコーヒー産業にとってはネガティブである。
キュウガーデンはキュの研究が世界のアラビカを守るための戦略発展の基礎を提供することになればと思っている。

最後にもう一度パームハウス周辺の花壇を眺めてキュウガーデンの見物はお終い。

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