テートブリテン

ナショナルギャラリーを出たのが12時半過ぎ、ピカデリーサーカスの交差点を渡り、地球の歩き方に出ていた日本飯屋でお昼を済ませる。

テートブリテンへはトラファルガー広場からテームズ川沿いをバスで15分ほど、ミルバンクというバス停で降りて2、3分である。

もともと絵の素養はまったくなく、ツアーに組み込まれていたり、個人旅行でも旅のついでに見て楽しむ程度なので、イギリス絵画については全く知識がない。午前中に見たターナーが展示されている部屋にターナー以外にいくつかの風景画があったが、多分イギリス絵画だったと思うが、絵も画家の名前も記憶がない。
それにしても、ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロが活躍していた16世紀の初め頃、イギリス絵画の話はあまり聞いたことがない。イギリスの画家達は何をしていたのだろう。

繰り言はさておき、イオニア様式の柱が並ぶ重厚な感じの玄関を入り、フロアーマップを見ると1540年から現代まで、Room1~13に500年にわたるイギリス絵画が展示されているらしい。
で、1540年~1630年のRoom1に入ると、肖像画がいっぱい並んでいる。貴族や裕福な人達が己のステータスの誇示のために描かせたのだろうが、ただの旅好きには絵の良さも画家の名前も分からない。

(撮影禁止なのでテートにメールしたところ、自由に使ってもよい。アプローチには、1540ー1930、1930-now、Rothko and Turner の3つがあるとして、それぞれのURLも添付されて返事がきた、感謝々々)

あらためて、Room1(1540-1630)はエリザベス1世の絶対王政からチャールズ1世の市民革命の時代だと思うが、
ジョン.ベルズ、黒い帽子を被った男、1545年。ラファエロのユリウス2世とは比べるべくもないが、穏やかなで澄んだ瞳に知性と胆力を感じさせる名画だと思う。


ヴァン・ダイク、メアリー・ヒル、1638年。メアリー・ヒルはキリグリュー卿夫人。ヴァン・ダイクがイギリス絵画に出てくるとは思わなかったが、チャールズ1世の宮廷画家として後半生をイギリスで暮らしたらしい。
繊細なタッチであでやかに描いて貰えると、注文がひきもきらないのが容易に想像できる。キリグリュー卿の肖像画もこの部屋にある。

Room2(1650ー1730)
大陸からの影響を受けて、風景画や静物画が人気になり、肖像画も家族や友人などグループが流行ってきた。
ピーター・レリー、スザンナと長老たち、1650年。聖書からとった題材、たくさん画家たちが描いている。ベルリンでレンブラントを見たことがある。2人の好色老人によっていわれのない罪で処刑されそうになったがダニエル青年により無実が証される、神の忠実、正義を表すので好んで題材にされた。

メアリー・ビアーレ、少女の肖像、1681年。女性画家、彼女は家族をモデルに描くことが多かったらしい。少女の肖像はもう1回振りかっえって見たくなる作品である。

ジャン・シベレヒツ、ベルサイズの風景、1696年。風景画が人気になってきた。

Room3(1730ー1765)

ウィリアム・ホガース、ストロード家の人たち、1738年。ホガースはヴァン・ダイクなど外国人画家に頼っていたイギリスにイギリス人絵画を確立した人だそうだ。家族と友人の幸せな団欒の風景だが、それまでのかしこまった表情の人物像からくつろいだ人物像となっている。

Room4(1760ー1780)

トーマス・ゲインズボロ、日暮れ…小川で水を飲む荷馬車、1760。1日の作業を終えて家路についている途中、小川で馬に水を飲ませている。絵の勢いや色使いがルーベンスに似ている。


ジョージ・ロムニイ、ジョンストン夫人と息子、1775年。母親に抱かれた幼児、安心しきっているようである。どこの国でもこのポーズは微笑ましい。女の子かと思ったら男の子だそうだ。ジョンストン夫人と息子ではないと言う説もあるらしい。

Room6(1810ー1840)

ジョン・コンスタンブル、ハドリー城、1828年。コンスタンブルがロンドンから東へ50km、テムズ川沿いの廃墟となっているハドリー城を訪れたのは1814年、その時のスケッチを10年あまり月日を経て絵にしたと言われている。夫人の死にあい、荒涼とした精神状態が産んだ作品なのかもしれない。


ウィリアム・エッティ、ヌードの女、1835年
画家達は神話に出てくる女神にことよせてヌードを描いていたが、この時代になるとヌードを女性美として描くようになた?

Room7(1840ー1890)

ジョン・エヴァレット・ミレー、オフィーリア、1852年。
川の流れに仰向けに浮ぶ女性の衝撃的な絵である。シェークスピアのハムレットの一場面を題材にしたもので、ヒロイン、オフィーリアがハムレットに父親を殺され錯乱、川に飛込み溺死しするところが描かれている。オフィーリアが持っている赤い花はケシだそうだ。

ジョン・サーゼント、カーネーション、ユリ、ユリ、バラ、1886年。
白い服の2人の少女が夕暮れがせまる庭で提灯に灯りをともしている。庭にはピンクのバラ、黄色いカーネーション、白いユリが咲き乱れている。見る人を惹きつける作品であるが、印象派とはちょっと違う感じである。

Room8(1890ー1900)

ジョージ・クラウセン、門の脇に立つ少女、1890年。
門の傍らに立つ少女と背景の納屋の様な家。貧しい風景と子育てに雇われたか何かで働く少女が田舎のたくましさを思わせる。

ターナー

現代絵画は良く分からず、ついていけないのでRoom9以降はスキップしてターナーのギャラリーに回る。

で、さすがターナー専用のギャラリーを持つテートブリテンだけあって、部屋中がターナー、ターナーである。おそらく200点近くありそうだ。(コンスタンブルなど絵もいくつかある)

自画像、1799年。ターナー、24才の頃の自画像、かなり美化したものらしい。

ノラム城の日の出、1845年。ノラム城はイギリスとスコットランドの国境にある廃虚、日が昇りノラム城は逆光のため青みがかった影の中にかくされているようである。朝日の黄色味が川面に伸び、牛たちが水を求めて求めて川にやって来るやって来る。

太陽の下に立つ天使、1846年。聖書からとった題材、画面中央では大天使ミカエルが燃え立つ剣をかざしている。前方には殺人と裏切りが繰り広げられており、左手はアダムとイブが兄に殺された息子のアベルを悼んでいて、右手にはホロフェルネスの首を切ったユディトが描かれている。

漁船の難破、1840年。

ドガ―バンクの海戦から帰還するヴァン・ソンプ、1833年。
オランダの画家の海戦画に刺激されて、ターナーも海戦史から題材をとって海戦シリーズを描いている。強風の向かい風に翻弄されながら船団は力強く前進、遠くに大型の帆船がゆったり進んでいる。

航行不能の船をルイスダール港に曳航する漁船、1844年。
海洋物の一連のシリーズの一作、ルイスダールという港はないらしい。

ウオータールー橋の上のテームズ川、1830年。近くには船が停泊し煙突から黒い煙が昇り、遠くにかすんで見えるのはウオータールー橋。

ヴェネチア、サンマルコの鐘楼とドゥーカレ宮殿、1819年。ターナーも憧れのローマやヴェネチアに旅した。