プーノ~フリアカ~クスコ~リマ~ナスカ

今日は最後の観光地、ナスカに向かっての移動日である。モーニングコールは5時、相変わらず早い。プーノには空港がないのでフリアカまでバスで1時間あまりの移動となる。

ナスカは丁度、クスコを頂点とするリマとの3角形の角になるので、クスコからナスカに直行すればよいのにと思うが、一旦リマに戻ってから7時間かけてナスカに向かうようだ、不便この上ない。南米は日本のようにちまちましていないので、尺度を変えなければならないが、今回のツアーは移動8割、観光2割というのが実感である。

リマに着き、海抜0mで高山病を振返ると、わがツアーの受けた打撃は決して軽くなかった。苦しさを我慢している表情の人がいつも何人かいたし、観光を休んでホテルで休養する人もでた。1番若くて体力のありそうな男性が、奥さんの話では、脳梗塞のような症状になりナスカ観光を中止するという。また、軽い脳梗塞を患ったことがあるという女性は右目が動かなくなった、早く帰って日本のお医者さん診て貰いたいという。厳しい。

リマからナスカは450km、アラスカから南米大陸の果てまで続くパンアメリカン・ハイウェーの1部を走る。

リマをでるとすぐに砂漠地帯が広がってきて、砂漠の山のあちこちにダンボールやベニヤ板で囲ったような家が見えてくる。また、レンガを積んだ家らしくなったものがかたまっている地域もある。ガイドさんによると田舎からリマに出てきた人は、最初はダンボールのような家から農場に働きに行き、何年かすると、家らしくなってくるのだそうだ。土地は不法占拠なので政府が追い出しても、いたちごっこになり、最後は大目に見ているらしい。

砂漠地帯を走っていると、また、広大な緑の畑が見えてくる。ガイドさんが言っていたようにペルーの砂漠地帯にはアンデスの地下水が流れていて、うまくボーリングで水脈にあたると豊富な水を確保出来るようだ。砂漠の緑化が進んでいるらしい。

今晩の食事時間や明日のモーニングコール、食事、集合時間や遊覧飛行で気をつけることなど、あれこれとこのガイドさんはしゃべってくれるが、ナスカの地上絵がいつ、何のために造られたのかといった肝心のことについての説明は一切ない。

スケジュールの説明は添乗員に任せればよいのに、どうなってるの。

ナスカ地上絵

そんなこんなで7時間近く走って、ナスカに到着。宿はナスカ・ラインズ。マリア・ライヘさんが研究のために長期逗留していたホテルである。
食後、しばらくテレビのサッカーを見て、風呂に入る。バスタブに湯をはって足腰をゆったりと伸ばすのは久しぶり、疲れがとれた感じになる。

飛行機は12人、5人と3人乗りがあって、抽選で5人乗りのセスナに乗ることに決まっている。7時の遊覧飛行が予約してあり、12人乗りがまず飛び立つ。
次がわれわれの順番で、乗り込むと結構狭い。パイロットの座席の上には日本語で、‘チップありがとう’と書いた紙が張ってある。

セスナは滑走路を走り始めると、あっと言う間に離陸する。朝早く、風がないので思ったより揺れがない。

5分ほど飛んで、突然、パイロットが、‘クジラ、右’と叫ぶ。はっきり確認出来ぬ間に、旋回が始まる。左右の座席で不平等がないように、方向を変えて飛んでくれるのだ。よほど集中していないと見過ごすなと思っていると、‘ウチュウジン、右’と言われてよく見ると、小高い山肌に、頭が丸くて胴の長い宇宙人のような絵が良く見える。サル、イヌ、コンドル、クモ、ハチドリなどうまく見えたり、見そこなったりだ。

ナスカの最後の旋回のころから胃を締め上げられるようになり、気分が悪くなる、高山病にも耐えた体だが、飛行酔いはまた違うようだ。で、パルパの地上絵は殆ど記憶がない。

着陸の態勢にはいって、谷間に6つほどの丸い穴ぼこが見えてくる、井戸だと聞いたことがある。で、40分の遊覧飛行が終わる。チップをUS$5。

200mほどの上空から見た、コンドルやハチドリなどは美しく芸術的な感じさえするが、空からでないと確認できないような巨大な絵を誰が、何のために描いたのだろう。

宇宙人飛来の標識だとか、為政者が気球に乗って上空から見おろして楽しんだとか、宗教的な儀式のためであったとか、などなど色んな説があるようだ。

マリア・ライヘさんは、地上絵は天の星々の位置や動きを地上に写し取った天文図で、重要な季節の到来を告げる暦の役割を果たしていたと解説しているそうだ。

難しい話は学者に任せておいて、観光客としては、上空からしか確認出来ない地上絵は、‘天に向けて発信された情報である’、ならば、‘天の神々になにを祈るか’、‘砂漠化して水が少なくなっていく農民にとって雨ほど貴重なものはないはずだ’、だとすると、‘雨の恵を天の神々に祈り’、‘そのための儀式を行った’と解するのが素人には1番腹に納まり易いがどうだろう。

ナスカ~リマ

昼食の後、ライヘさんの見張り台(ミラドール)から木と手らしい地上絵を見て、一路リマに。
途中、トイレ休憩のイカのホテルの庭で添乗員の苦労話をすこし聞かせて貰う。

モーニングコールが2時半、3時、4時と続く今回の旅程では、想像していた通り。
ホテルではあまり寝ていないそうだ。飛行機のなかなどで睡眠をとっているとのことだが、細身の体でよく頑張れるものだと感心する。派遣が9割以上を占める厳しい業界にはハードシップ手当など一切ないらしい。細身美人の彼女も派遣で、日本に帰って業務報告と精算を済ませると、次の添乗の声がかかるのを待つ身だそうだ。