ナクル湖のロッジ出発は予定より1時間早い7時、いよいよ今回のサファリの最後、マサイマラに向かう。
マサイマラ国立保護区は1840km²、大阪府とほぼ同じ面積らしいので今回のタンザニア、ケニアサファリの中では桁違いのスケールである。肉食獣、殊にライオンの生息数が多いのが有名だし、7~8月には何百万頭ものヌーやシマウマが隣のセレンゲティから餌を求めてやってくるので、運がよければヌーの川渡りを見ることが出来るかも知れない。
昨日、展望台から見たグレイト・リフト・バレイは芒洋としていて何だかよく分からなかったが、今日はその底に下りてグレイト・リフト・バレイを横断するようである。
道路は舗装され、数キロ下ると今度は数キロ上ったりを繰り返すが、順調な走行である。車窓はタンザニアの灌木や枯れ草のサバンナと違って緑が多く、麦畑らしき風景もある、で、大地の割れ目と言う実感は無い。大阪に戻って、グーグル・アースの鳥瞰で見れば、グレイト・リフト・バレイを理解出来るかも知れない。

ナロクと言う大きな町の近くでトイレ休憩、そろそろ土産を買っておかないと、後で買えなくて後悔したりすると思って木彫りのビッグ5を物色する。高さ30cmほどの象の値段が$180と聞いてびっくり、ジンバブエの青空マーケットで同じような大きさの象を$5で買ったことがある(後で後悔したのだが、言い値$20を大阪人のノリで$5に負けさせた)

半値8掛2割引にしても、ちょっと手を出せそうにないので、長さ20cmほどのサイに絞ることにした。$50の値札がついおり、黒檀だから高いのだと言う。
ケニアの1人当たり所得は日本の1/20くらいらしいので、材料費、職人の工賃、流通経費、土産物屋のマージンなどを充分見積もっても$10がいいところである。外国人向けの吹っ掛け値段もいいとこだが、ジンバブエのこともあって$20で手を打つ。

ナロクの町を出で左折すると後はマサイ・マラまで一直線で行くらしい。この道路も舗装されているのだが、メンテがされていないのか車が進むにつれてあちこちに舗装の剥がれや穴ぼこが目立つようになってきた。ドライバーが慎重運転で避けてくれるが、避けきれない時にはドンと尻があがったりする。そのうちに未舗装道路となり砂ぼこりを上げながら走り、トイレ休憩もしたりして13:20過ぎ、マサイ・マラのロッジに到着する。

われらの宿はマサイ・マラ国立保護区の北東寄りの端っこにあるらしい。敷地内に点々と建つロッジの1つに入ると、‘豹が敷地に現れることがあるので注意’という張り紙があってちょっと怖い。
なんでもロッジは保護区内にあるので動物に優先権があるとして、出くわした時の注意点などが書かれているようだ。

イブニングサファリ

16:00にロッジを出発、15分ほど走ると山すそを移動する10頭ほどの象の群れに出くわす。小象が2~3頭、動物の子供は何時見ても可愛い。群れは寝ぐらに帰ろうとしているのだろうか?

10分ほど進むとバッファローが泥水の水たまりにしゃがみ込んで、じっとしている。伏し目がちょっと寂しそう気もするが……
2~3分走ると、今度はエジプトガン(?)の夫婦、子供が10羽くらいいるようだ。このうち何羽が無事に大人に成れるんだろうか?
そんな心配をしていると、近くに、また、バッファローがいる。水たまりにしゃがみ込むポーズはさっきと同じだが、こっちのバッファローの目は迫力がある。

さて、また、10分ほど走っていると前方に車が5~6台止まっている。ドライバーが急いで駆け付けてみると、道端にメスライオンと子供が2頭いるようだ。遠くにはトピの群れがいて、そのなかのボスがこちらのライオンを気にしている様子である。親ライオンがちょっと移動して木片の傍に腹ばいになると子供たちもやって来たりて、長閑なひと時を過ごすようである。

ライオンの親子を見てから20分、出発から数えると1時間10分、ついにサイを発見、口が平べったくない感じなのでクロサイらしい。でも、結構、遠いので迫力はあまり感じない。じっとしているようだが、少しずつ体を動かしており5~6分後にはうずくまってしまった。

この後、木の上にワシ、広い草原の彼方にトピ、草原のど真ん中にオスライオンを見てイブニングサファリはお仕舞、保護区内の東の端辺りをサファリしたようだが、中身は結構、充実していた。

ロッジ

旅行会社は、サファリの魅力のひとつは 「ロッジ」だとパンフレットで豪語し、ロケーションや展望などにこだわって厳選しているとしている。ところが、アンボセリはオルトカイ・ロッジが指定されているが、ナクル湖とマサイ.マラでは、それぞれAとBどちらかになるとし、結果はどちらもBになっている。Aは地球の歩き方にも載っている1泊$300~400の高級ロッジであるが、Bは載っていない。ちょっとランクが落ちるようである(円安の影響が出ているのかも)。

1泊のナクル湖はまだいいにしても2泊するマサイ.マラのロッジは戴けない。オルトカイ・ロッジに比べて内装がちょっとシンプルというかお粗末である上に、22:00から翌朝の6:00まで湯が出ないし、電気も消えてしまう。(高級ロッジ以外は同じようである)
今一番の楽しみは23:00頃、寝床に入って1時間ほど本を読むことであるが、22:00に電気が消えるとこの楽しみが奪われる。
22:00に寝て6:00に起きれば健康的でよろしいと言うことかも知れないが、不良老人には習慣を変えられることが辛い。また、運が悪いことに懐中電灯が壊れてしまって暗闇のなかトイレに行くにも難渋した。
皆さんも、どうしてもオルトカイ・ロッジと比べてしまうとかで、マサイ.マラのロッジの評判は良くなかったようだ。

それにしてもサバンナの真ん中なので土地代はタダみたいなものだろうし、建物もカヤブキの屋根に簡単な壁を張るだけなので建築費もさほど掛からない筈、内装は千差万別だが超高級ロッジは別にして ビジネスホテルの方がよっぽど高級な感じである。ガードマンなどの人件費もしれたものだろうし、1泊6~7万円、10万円するロッジもあってパリやロンドンのホテル並みの料金になる理由が分からい。その上、人の居住が許されない国立公園のなかにロッジがいっぱい建っている。植民地時代の権益が引き継がれているのかも知れないが、べら棒な観光収入が正当に課税されずに本国に送金されるようなことはないのだろうか。マサイのひとたちには土産物売りやガードマンになること以外には観光で豊かになることはないのだろうか?