ライオン

少し走ったところで、同乗者の一人がライオンがヌーを襲っている!と興奮気味に知らせてくれる。皆さん、教えられた方向に双眼鏡を向けてライオンの姿を確認したようである。
120~130mも離れているようなので、肉眼の自分には米粒ほどにしか見えない。慌ててレンズを270mmいっぱいに引き出してファインダーを覗いてみると、丁度ライオンがヌーを襲っているところである。ライオンは2頭、1頭がヌーの首筋に齧り付き、もう1頭は後ろからヌーに飛び掛かっているようだ。で、次の瞬間、ヌーはドサットと倒れ、2頭のライオンは覆いかぶさってヌーの息の根を止めたようである。
やっと食べ始めたのかと思ったら、1頭のライオンが後ろ向いて咆えたてている。その方向をみるとハイエナがライオンの咆哮に怖じ気づいて去って行くところである。邪魔者を追い払って、2頭のライオンは少し遅めのご馳走を堪能するらしい。
ハイエナが去った後の大草原にはダチョウが1羽(頭?)、何事もなかったように後姿を見せている。

山側に向かって(広大な大草原の中を走り回っている感じなので実際はどっちの方向に進んでいるのか分からない)15~16分走ったところで、枯れ草に隠れるような雌ライオンを発見、30mほど離れたところにもライオンがいる。手前のライオンは子連れかどうかよく分からないが、奥のライオンには子供がいるようだ。ドライバーが奥のライオンの近くに回り込んでくれたのでよく見ると子供は3頭いる。昼下がりのひと時、寝転がったり、寝そべったりしてだらしなく無防備のようにも見えるが、サバンナの食物連鎖の頂点に立つライオンならではことのようだ。

閑話休題、マカディ湖の方を振り返ってみると、対面の外輪山の辺りがうねった波のような雲に覆われている。午前中、外縁を走っていた時、深い霧に包まれたが、あの辺りの森が雲に覆われているようだ。
これはインド洋から東アフリカに向かって吹く貿易風によって運ばれてきた南東の湿った風がンゴロンゴロやオルモティクレーターなどの外輪山にぶつかり、斜面に沿って吹き上がる時、急に冷やされて雲や霧を生むと言うことらしい。

素浪人の髪形を感じさせるアフリカオオノガン、オルモティクレーターから流れ出る川に沿ってあちこちに出来た湿地のカバなどを眺めながら進んでいると、見事なたてがみの1頭の雄ライオンが道路脇に腹ばいになっている。何時ものことなのか、車が近づいても動ずる様子はなく、むしろライオン様に人間が無視されているようだ。ドライバーがしばらく車を止めてくれて、やっと立ち上がった雄ライオンの雄姿を見せてもらう。

ヌーの大群を眺めた後、山側から湖の方に戻っていると獲物をさがして歩く1匹のハイエナが目に入る。ハイエナは群れで行動するのかと思っていたが、午前中に見たハイエナも1匹だけだったので、単独行動することも結構あるらしい。

そんなこんなで午前中のサファリが終わり、ゴイトクトクの泉と云うところで昼食となる。時計をみると13.40分過ぎになっている。あっという間だったが、1時間半ほどのサファリだったようだ。
ゴイトクトクの泉は泉と云うより池と云う感じで、カバが何頭も浮かんでいる。そのゴイトクトクの泉の西側になだらかな斜面が広がっていて恰好のピクニックエリアとなっており、30~40台の4WDが先着している。車外に出ることが出来る唯一のエリアなんだが、ピクニック気分で弁当を広げると鳶が狙っているそうで車内でのランチとなる。車の周りには黄色の小鳥がやって来たりして人間を恐れる様子はない。

1時間ほどの昼食時間が終わって、午後のサファリが始まる。ルートは午前中とは逆にマガディ湖の南の山側を西に向かって進むようだ。
で、ヌーを山側に見ながら進んでいると、草原のど真ん中に雄ライオンが1頭、なんとも所在無げで欠伸をしているように見えるが、こちらを向くと堂々としたタテガミは貫禄充分である。
すぐ近くの道路沿いにもビッグファイブがいるらしく車が10台近く止まっている。われらの車も近づいていくとライオンが木陰いるようだ。ライオンが3頭いるのかなと思っていたら、同乗者が4頭いる!と教えてくれる。ドライバーが車の列に割り込んでくれてさらに近くで見ると、なるほどオスライオンが2頭とメスライオンが2頭いるようだ。ライオンは女系家族かと思っていたがオス、メスそれぞれ2頭とは、仲よさそうな核家族のようにも見える。どういうことなんだろう?

この後、ジャッカル、バッファロー、イボイノシシ、トムソンガゼル、カンムリズル、カバなどを見て、レライの森に入ると木陰に象が見え隠れしていて、湿地のサバンナモンキーを見ながら進んでいると、すぐ近くに象が現れる、4~5頭いるようだ。

登り口から外縁に戻り、午前中、霧のためにスキップした展望台からあらためてンゴロンゴロクレーターを眺める。これで今日のサファリはお仕舞。
ンゴロンゴロから10分ほどのムト・ワンブにあるロッジが今晩の宿、宿泊客はわれらのみ。7月半ばの書き入れ時のはずだが???