アテネ国立考古学博物館

津の夫婦は単独行動派なので、加古川から参加のご夫婦と一緒する。
近くで腹ごしらえをして少し早めに博物館の入口で待っていると13時、ぴったしにドアーが開く。実はギリシャ政府観光局に電話で月曜日の開館期間を確認した時、13時半と言われ、添乗員も13時開館になっているけど、ギリシャのことだから30分くらい遅れることがあるかもと言われて、時間がタイトなので心配していたところであった。お二人とは14時50分に入口付近で落ち合うことにして見学を始める。

先史時代

正面の大きな部屋がミケーネ遺跡の出土品など先史時代の展示室で、入ったすぐ左手に小さな人形の坐像がある。たぶん酒を飲んでいるらしいこの可愛らしい粘土人形は驚くことに紀元前4500~3200年頃のものである。

そして正面のガラスケースのなかに、ミケーネの円形墓地Aから出土したシュリーマンの黄金のマスクや黄金の王冠、杯、剣など‘黄金に富めるミケーネ’がある。
このほか狩か戦車競争らしいレリーフのある墓石など紀元前1600年頃もの。現物をみるとミケーネが高度な文明であったことが実感出来る。
右手の小さなキクラデスの部屋に竪琴を弾く人とフルートを吹く人の大理石の彫刻がある、ケロス島から出土したもので紀元前2800~2300年代とか。小さな像ながら特徴がよく分って面白い。

アルカイック期

ミケーネの部屋を出て左に回ると彫刻の展示が並んでいる。
最初はデルフィー博物館でも見たアルカイック期のクーロス像である、さすが国立考古学博物館だけあってクーロス像が何室にも亙って展示されている。‘スニオン岬のクーロス像’はポセイドン神殿から発見されたもので、口元が削がれてよく分からないがアルカイックスマイルの3mを超える巨像である。紀元前600年の作。
最後の方の部屋に‘アリストデコス像’、葬送クーロスでアッティカのメソゲイアで発見された紀元前500年のもの。
クーロス像は年代順に展示され、男性の理想が時代とともに変っているらしいが、美術音痴にはよく分からない。

ポセイドンのブロンズ像

ポセイドンのブロンズ像はNHKの番組を見て、ぜひ現物を見たいと思っていた目玉の1つ。右手を上げ三つ又鉾を振り回している様子で、均整のとれた筋肉質の体、威厳のある顔など、躍動感のある人間が表現されているが、古典期より少し前の特徴があるらしい。アルテミシオン岬で漁師が海から引き上げた、紀元前460年の作。

墓碑

ポセイドンの部屋の突き当たりを右に進むと、墓石のレリーフが何室かに亙って展示されている。ペロポネソス戦争で死者が増えると、それまで、小さな墓であったのが、徐々に大きなモニュメントとして墳墓が作られるようになり、壁には死者が生前に好んだ姿のレリーフを飾るようになったと言われている。‘イギソスの墓碑’はプロセノスの娘イギソスが椅子に座り、召使の差し出す箱から何かを取り出している生前の場面が描かれ静寂を感じさせる。ほかに息子と両親、父親と家族のレリーフなどなど。

馬に乗る少年像

真ん中辺りの21室には、有名な‘馬に乗る少年’のブロンズ像がある、前足をあげて疾走する馬と、左手に手綱、右手に鞭を持ち、見事に乗りこなしている少年の躍動感がよく分かる。この部屋にはさらに‘ディアドゥメノスの像’やエルメス像など大理石彫刻の傑作が展示されている。

アンティキセラの青年像

何室かを通り、角を曲がった28室にはアンティキセラの青年像がある。右手には球状のものを持っているので、たぶんりんごを持ったパリスではと言われている。理想的な体つきや体型のバランスを写実的に表現しておりペロポネソスの古典期後期の見事な作品である。

ヘレニズムの部屋
アフロディーテと牧神パン、エロス像

ヤギの足をしたパンがアフロディーテに纏わり付こうとするが、アフロディーテはパンをスリッパで叩こうとしている。官能的な作品である、紀元前100年の作品。
このほかポセイドンやテミスの大理石像の傑作など。

クレタ室

21室に戻って2階に上がる。
壁画‘春’
テラの風景を描いたフレスコ画の壁画、火山岩やゆりとツバメを描いた絵は春の息吹が感じられる作品である。ツバメがキスをしているようでなんとも微笑ましい。
紀元前16世紀の壁画とは驚きだ。

ほかに現代的な感じをおこさせる‘ボクシングする少年’とカモシカの壁画、いずれも紀元前16世紀のもの、テラ(サントリーニ島)出土。

14時40分に博物館を出て、トロリーバスに乗ってシンタグマ広場に。
集合時間に余裕があるので、国会議事堂の衛兵交代を見る、奈良のペアーの写真を撮らせて貰って、カメラもおしまい。

アテネを定刻に出発、帰りも、ギリシャ観光だけで5組のツアーでエコノミーは満席である。窮屈ながら、ドーハ乗り継ぎもスムーズ、関空に無事帰る。

今回の旅はあっと言う間に終わった感じである。ギリシャ神話にどっぷりと浸かった感じで楽しい旅行であった。温和で親切なグループの皆さん、ギリシャに造脂が深い美人の添乗員、皆さんに感謝、感謝。