ポツダムへはツオー駅からSバーンでフリードリッヒ・シュトラッセ経由、約1時間、RE(地域急行)だと20分で行ける。REもベルリンカードが使えると聞いていたので、ホテルを少しゆっくりめ、8時半に出発する。

市内観光のときは、現地の人らしく見えるようにスーパーのレジ袋にガイドブックやカメラなどを入れて持ち歩いているが、電車がポツダムへ近付いた時、なんとなくカメラを取り出したところ、カメラが水浸しになっている。

ペットボトルのふたをきっちりと締めていなかったようだ、カメラは電源を入れても作動しない。
ポツダムでは絵葉書をたくさん買わなくてはならないし、ベルリンに戻ってカメラを買わなくてはと思うと気分が重くなる。

ポツダム中央駅前の乗り場で日本人女子大生と一緒になる。フランスのリヨンの大学に1年留学していて、日本に帰る前にベルリン来ているそうで、午後にはハンブルグの親戚に行く予定とか。高槻の出身なので結構話が弾む。

バスに乗って15分ほど、サンスーシ公園の麓で降りて宮殿に向かう。

サンスーシ宮殿

サンスーシ、東京の郊外にこの名前を付けた有料老人ホームがあり、仕事で関係したこともあり、フランス語で‘憂いのない’という意味らしいので、憂いのない宮殿とはどんなものか見てみたいと思っていたところだ。

宮殿はプロイセンのフリードリッヒ大王が夏の離宮として18世紀半ばに建てたロココ様式に装飾された華麗な宮殿で、王は居城のシャルロッテングルグ宮から移り住んで殆どこの宮殿で過ごしたらしい。

宮殿内の見学はグループツアーになっていて20分毎に出発するようになっている。説明はドイツ語で、われわれには日本語の説明書きが渡される。

30人ほど集まって、靴の上に大きなスリッパを履かされ床をこすりながら歩く、見学者に掃除役をさせているのか知らんと囁きながら皆の後についていく。

最初の部屋は入口の間、コリント様式の大理石の柱の柱頭は金色の木の葉模様に装飾され、天井には花を撒いている女神フローラが描かれている。
部屋に置かれている坐像はローマ神話の軍神マルスでルイ15世から贈られたものとか。

ドアのロココ様式の飾りはワインと酒の神々が陽気に騒いでいる様子が描かれていて訪問者は夏の離宮に来ている気分にさせられるのだそうだ。
続いて、小回廊、ワットーの絵などが飾られていて画廊のようである。図書の間をちらっと外から覗き、寝室、音楽の間など見て大理石の広間に。

大理石の広間が宮殿の中心のようで、ローマのパンテオンを意識して作られたと言われている。楕円形のこの広間は装飾も一段と豪華である。この広間で建築や芸術について語られたのだろうか。

広間を後にすると、客間が第1から4まで並んでいる、第4の客間は造りや装飾が他の客間より華麗になっていて、宮殿の主の最も有名な客、ヴォルテールが滞在したとも言われているが、どうもあやしいようだ。

1時間ほどで宮殿のなかの見学は終わるが、ヨーロッパにあるいくつかの宮殿と似たり寄ったりの感じで、凡夫の身にはどこが‘憂いのない’のか分からない。で、ひな壇式の庭園に回る。
庭園は中心を通る道が2.5kmもある広大なもので、中国茶館やオランジェリーなどの離宮が点在している。

大王はひな壇式のブドウ畑を最初に作らせたといわれ、この庭園から眺める宮殿は絶景である。

ツェツィーリエンホーフ宮殿

サンスーシ宮殿をあとにして、ツェツィーリエンホーフ宮殿に向かう。
途中でバスを乗り換えなければならない、一人旅で一番不安になるのが乗換えであるが、今日は自分より少し言葉の出来そうな彼女におまかせする。

ツェツィーリエンホーフ宮殿は木造2階建て、宮殿というより英国風のカントリーハウスといった感じである。
1945年7月、トルーマン、チャーチル、スターリンが集まってドイツの戦後処理、日本の降伏条件を決めた会談がここで行われた。

代表団の控えの部屋に続き、会談が開かれた部屋には円形のテーブルが当時のまま置かれている。手狭な部屋は世界の今後を決める会談が本当にここで行われたの、という感じである。

帰りはSバーン、学生の彼女は切りつめた予算で旅行しているらしい、遅い昼食をご馳走した後、別れてホテルに戻る。
それにしても暑い、ベルリンは北緯52度くらいなので、樺太の真ん中より北に位置して涼しい筈だが、連日30度を超える猛暑が続いている。

フロントで電気店の場所を聞いて部屋に帰り、クーラーのスイッチを入れてシャワーを浴びる、さすがにこのホテルはスーペリアだけあって、クーラー付である。

一休みした後、電気店に行こうとして、なんとなくデジカメのスイッチを入れるとレンズが出てきて、モニターも写り、シャッターも正常に作動する。助かったぁーと言う気分だが、ミュンヘンでは置忘れ、ポツダムでは水浸し、このカメラには感謝々々である。

気分をよくして近くのスーパーでサラダとビール 、屋台で焼きソーセージを買って、ブラジルとドイツ戦を見ることにする。