入口の横にある音声ガイドのデスクで日本語のガイドを借りて、ペルガモン祭壇の部屋に入る。

祭壇は新約聖書でサタンの座と書かれた祭壇を忠実に復元していると言われ、長さ35~34m、高さ10mほど。
30段の階段の上にはコの字形の列柱回廊がそびえ、階段の途中に作られた出っ張った台座が列柱回廊の両翼部を支える構造になっている。
祭壇を取り囲む広間の壁や台座のフリーズには高さ2.3m、延長113mにわたってオリンポスの神々が巨人族と戦う様子が刻まれている。

ゼウスのレリーフ

広間の正面のフリーズにはゼウスが鷲に伴われ3人の巨人と戦っているところが描かれていて、ゼウスは力強く、満身の力を振り絞っているようだ。

女神のレリーフ

広間右手のフリーズには女神がへびが巻きついた器を投げようとしている場面があり、華奢な顔立ちの女神は髪をアップにし、衣服の襞は流れるようで華麗に表現されている。

海神のレリーフ

出っ張り部の正面には海神トリトンが母と共に巨人と戦っている様子、階段側のフリーズにはネレウスやオケアノスらの海神が巨人たちを追い詰め、戦いの場を制圧している場面が描かれ、濡れた衣服が体にくっつき、襞が重く垂れ下がっている様子はヘレニズムの自然主義の流れをくんでいるように思われる。

113mにわたって描かれている戦いの場面はいずれも力強く、躍動的、華麗でヘレニズムの傑作と言われるのが頷ける。

ペルガモン博物館はペルガモン祭壇の部屋を真ん中にコの字形に展示室が並んでいて左手はギリシャ・ローマの建築や美術、右手にはミトレスの市場門を通るとイシュタル門、行列通り、バビロニアやアッシリアなど西アジアの美術の展示室となっている。(ペルガモン遺跡、ゼウス大祭壇へ)

ギリシャ・ローマの彫刻・美術

アテネ神殿の部屋を通ると、ギリシャ彫刻の部屋が続いている。最初の部屋にはアッティカ出土で紀元前5世紀頃と言われる、高さ2mの女神立像、二人の死者の墓碑レリーフ(スパルタ近郊)など、王座の女神像、少女の墓碑レリーフ、ライオン、戦車競争のレリーフ、ペルガモンのアッタロス1世の肖像など、2階の部屋にはユリウス・シーザーの胸像などなど。

ミトレスの市場門

祭壇の部屋に戻り、右手に回ると最初は古代ローマのミトレス市場門の部屋。皇帝ハドリアヌス時代の建築でローマの南市場の入口にあったもの、高さ30mほどの2階建て大理石造りの古代ローマを代表するファサードであるが、残念ながら補修工事のため網がかかっている。
で、次のイシュタル門、行列通りへ

イシュタル門、行列通り

エジプトと西アジアはともに文明の発祥の地であり、変遷の激しかった西アジアで紀元前7世紀後半にメソポタミアを支配したのが新バビロニアであった。

バビロンの守護神マルドゥクの主神殿はエサギラと呼ばれ、ここでは毎年春の初めに新年祭が行われ、主神マルドゥクと妻ベルトウ女神に対する祈祷と供養が行われた。神官が神前でバビロンの王を打ち据え、過去1年の行為を審判する、王の宣誓と涙によって査問は終了し王位は1年更新される。

王位更新を済ませた王と神官に導かれた行列が市外にあるアキートウ神殿に向かう。イシュタル門を経てユーフラテス川を越え、アキートウ神殿で新年祭の行事が行われ、王と国土の運命が定められる。

イシュタルは愛と戦いの女神で、バビロンでは主神マルドゥクに次ぐ神である。そのイシュタルの聖なる動物がライオンである。
行列通りはイシュタル門と神殿をつなぎ長さ180m、120頭のライオンが壁を飾っていたと言われている。(パルミラ、ベル神殿に戻る)

19世紀末にドイツ隊が発掘し、1930年にペルガモン博物館が開館したときに、この行列通りの30mとイシュタル門が復元されたとのこと。
煉瓦壁のライオンは堂々と歩いている姿で描かれ、鮮やかな色彩で、生き生きとしており、近代の壁画を見ているような感じで、とても2500年以上も前のものとは思えない。