9時45分、テーブルマウンテンを後にしてケープ半島の見物に向かう。
バスがライオンズヘッドの麓にさしかかった時にテーブルマウンテンを振返ってみると頂上の辺りに雲がかかってきている。つい30分ほど前は雲ひとつない晴天であったが、山の天気は急変するようだ。
山頂の説明板に‘海からの湿りを帯びた空気が山を越える時、凝縮されて山頂を覆い、丁度、テーブルクロスがかかっているように見えることがある’という説明があったが、この雲が成長するとそのテーブルクロスと言われる現象になるのかもしれない。

白い砂浜が美しいと言われるキャンプス・ベイの町を過ぎて海岸線を走り、ちょっと内陸に入ってしばらく走ったと思っていると、小さな港が目の前の見えてきた、ハウト・ベイである。ガイドさんによれば‘ハウト’はオランダ語で木という意味で、17世紀の半ばにオランダ人のリーベックという人がこの地に上陸して自分の日記に‘世界で最も美しい森’と書いたことから、ハウト湾と呼ばれるようになったそうだ。

ドイカー島(別名、シールアイランド)

このハウト湾からオットセイの観光船が出ており、A4裏表一枚の日本語案内を貰って乗船する。お客さんは100人ほど、アジア系の若者が隣に座ったので、韓国からかと聞いてみると中国人だと言う。5~6年前はヨーロッパなどで韓国の旅行者をよく見かけたが、最近は中国人が南アフリカくんだりまで出かけてくるようになっているらしい。

ドイカー島まで20分ほどかかるらしいので日本語の案内を読んでみる、‘南アフリカオットセイはアシカの一種で寿命が20~25年、オスはメスより一回り大きく300kgまで成長します。ドイカー島のコロニーには季節によって変化するが600頭~5000頭います。1回に1頭を生み赤ちゃんは6週間後に海に入ります。主食は魚、貝、タコなど。1年に1回体毛が生え変わり、時速17kmで泳ぎます。主な敵はサメ、シャチそして人間です’などなど。

岩山の岬を回ってしばらくすると岩礁が見えてきた、遠目には岩礁の上一面、蝿が群がっているように黒々としている。
船がドイカー島(岩礁)に近づき岩礁の側に停船してから近くで見ると、いるわいるわ、岩礁全体がオットセイに覆われている、1000頭以上もいるのかもしれない。よく見ると、流線型の体は分厚い毛で覆われているようで黒光りしている。

動物園で2~3頭のオットセイを見る時には可愛らしい感じがするが、これだけのオットセイが隙間がないほど寝そべっていている光景はちょっと気味が悪い。
海のなかでもあちこち群れをなして泳いでいたり、遠くを見るとクジラの尾びれのようなものも見える。これだけのオットセイやクジラなどが生きていくには想像もつかないほどの食料が要るはずだが、ケープ半島の海はよっぽど豊かな海らしい。

チャップマンズ・ピーク・ドライブ

トイレ休憩やショッピングタイムなど20分のフリータイムがあって11時半過ぎにハウト・ベイを後にして次の観光地のボルダーに向かう。

ハウト湾を回るように走って対岸の坂道を登ったところで、写真ストップ。ケープ半島でも有数の絶景ポイントだそうで、ハウト湾を背景に添乗員を加えた美女3人をカメラに収める。
バスが再び走りだしてガイドさんのお話が始まる、‘今、走っている道はチャップマンズ・ピーク・ドライブと言って、ハウト湾からヌールトフックという所まで約10km続いています。この道はチャップマンズ・ピークと言う山の山腹を受刑者たちが7年の歳月を掛けて堀り、1922年に開通させたものです。大変景色のいいドライブウェイですが、受刑者たちの苦労は大変なものでした’

当時は現在のような大型重機はなかったであろうからツルハシとモッコでそれこそ一寸一寸掘り進んだものと思われるが、監督官に鞭打たれる受刑者たちが目に浮かぶようだ。
右手にはバスがカーブ(大小100箇所以上ある)する度に真っ青な海と絶壁が織りなす絶景がつぎつぎに広がってくるが、左手の山肌には今にも崩れそうなところがある。花崗岩と砂岩の地層のようだがテーブルマウンテンより侵食が進み、風化しているところがあるようだ。ガイドさんの話では8年ほど前に岩石が崩落して死亡者もでたらしい、今は落石があっても直接海に落ちるようになっているとのこと。