ケープ半島の西側(大西洋)にお別れして、半島を横切って東側のフォルス湾に出る。青い空と紺碧の海が果てしなく広がっている感じだと感嘆しながら、しばらく海岸線を眺めていると、ガイドさんに鯨がいますよと言われて、慌ててカメラを向ける。咄嗟のことで尾びれしか撮れなかったようだ。
ついでにと言って話してくれたのが、海のBIG5。サファリのBIG5はライオン、象、豹、バッファロー、サイだが、このBIG5に対抗してこちらではクジラ、シャチ、イルカ、オットセイとペンギンを海のBIG5と呼んでいるとのこと。
サメが入っていないのは嫌われ者だからだろうか。

ボルダーズビーチ

沖合いには軍艦が停泊し、湾に沿った急斜面の緑のなかに白い家々が建ち並ぶ美しい町、サイモンズ・タウンに到着。ここから徒歩でペンギンのコロニーのボルダーズビーチに向かう。14~15分ほど歩いてボルダーズビーチの看板が見えてきた時、道路の真ん中をペンギンがヨチヨチ歩いている。車に轢かれないかと心配だが、ここでは町の人とペンギンが一緒に暮らしているのだろうか?

公園の入口を入ると、木製の遊歩道が海辺の方に伸びている。ガイドさんについて遊歩道を進んでいく。が、その前にちょっとボルダー・コロニーの歴史やペンギンの一生などを説明板から、

ボルダー・コロニーの形成

1984年
一つがいのペンギンがボルダービーチに巣を作った(ボルダービーチは南アフリカで最も新しいペンギンの生息地である)
1990年
ボルダー・コロニーに50以上の巣が作られた
1997年
コロニーには700以上のつがいが子育てをするに至った
2002年
1100組以上の子育て中のペンギンを含めて3500頭の大人のペンギンが生活するコロニーになった

1960年頃からペンギンの主な餌となるマイワシが乱獲によって減少したり、その後回復したりしていましたが、1980年代になって安定してくるとボルダービーチやロベン島などに新しいコロニーがされました。
ボルダーではペンギンの数が増えるとコロニーは海岸線に沿って拡大していきましたが、一部は陸地に上がり近くの民家の庭にやって来て住み着きました。その結果、騒音や(ロバのような鳴き声をだすので、もともとはJackassと呼ばれていた。Jack-assとすれば分かり易い)、庭木や花壇が荒らされる害、糞害をおこしたり、犬やねこなどペット攻撃したりして歓迎されざる訪問者となっていきました。ボルダー海岸公園援助委員会による管理案が作られたたりしていましたが、1998年、ボルダー・コロニーはケープ半島国立公園に組み込まれて、保護区となっています。

ペンギンが住民に迷惑をかけないようにフェンスなどでコロニーを囲って保護しているのだろうが、真昼間に道路を我が物顔に歩いているのを見ると簡単にはいかないようだ。

ペンギンのライフサイクル

南アフリカでは主に3~5月が産卵期にあたります、彼らは陸上で出会い、ブッシュや岩の下の浅い穴を壊し、新しく作り直します。
メスは2個の卵を産んでから2~3週間後、2~3日間巣から離れます。両親は互いに卵を守ったり、温めたりします、一方が魚を獲りに行っている間、他方は 巣にいますが、このシフトは2日半続きます。
卵は40日ほどで孵りますが、最初の卵が孵ってから2~3日後に2番目が孵ります。30日間は両親は互いに交替で敵から子供を守ります。
子供たちは最初の危険期を生き残ると5~6箇所の子供がグループとして寄り集まり、親が餌を獲りに行っている間は防御と保温をし合います。
親は半分消化した餌を戻して子供に与えます。最初に生まれた子供は2番目より少し大きく、より多くの餌を取ってしまうので、2番目は90%以上、飢えのために死にます。
2~3ケ月たつと、2~3kgになっていて最初の子供は海に出されます。小さな子供が生き残って海に出るようになれば巣立ちです。
若い子供のベイビーブルーとして知られる青みがかった灰色はサメやオットセイなどの敵から身みを守るカモフラージュの役目をします。しかし無事に家に帰ってくるのは半分ほどです。
若いペンギンは体毛を生え変わらせるために生まれたコロニーに戻って来て、黒と白の大人のペンギンになります。
ペンギンは1年に1~2回、生え変わります。生え変わりの期間は陸上に立てこもるので、その前の5週間は海に出てたくさん食べます。体重は30%くらい増えますが、生え変わりの期間の終りには、その体重は半分に減ってしまいます。
生え変わりの後、2~3週間は子育を始める前に再び太るためにたくさん食べなくてはいけません。多くのペンギンは4才で初めて子育てに入ります。
ペンギンの平均寿命は12年と言われていますが、なかには24才のペンギンが知られています。
ヨチヨチ歩いて可愛いペンギンだが、なかなか厳しい一生のようだ。

さて、ちょっと話しが長くなったので、急いでガイドさんの後を追うことにする。遊歩道を進んで右手に折れると、大きな岩かげに7羽、近くの水辺に5羽、いずれも立って歩いているので、たらふく餌を食べてから巣穴に戻って行くようだ。
フェンス際にはまるまると太ったペンギンが1羽、人間が近づいても心地よさそうに目を閉じたまま動じない。
遊歩道の突き当たりに行くと、前面に砂浜が広がっていて100羽くらいのペンギンがのんびりとしているようだ。巣穴で一羽で卵を温めていたり、つがいで仲良く巣穴にいたり、家族一緒でいたり、なんとも微笑ましい光景である。よく見ると青みがかった毛の子供が結構いるようだ。子供たちだけで5~6羽が寄り添っていたり、生え変わりの途中のようなペンギンもいて愉快である。