アブ・シンベルの観光を終えて、アスワン経由でいよいよカイロに向かう。
今日のカイロ観光予定はカイロ考古学博物館の見学である。

カイロ考古学博物館見学 その1

一般観光客の見学が終り、閉館された後、7時から9時までわれわれの旅行社だけの貸切見学である。
もともとカイロ博物館は1835年に創設されたものだが、現在の建物はフランスの建築家によって建てられたネオクラシック様式の2階建で、初期王朝時代からグレコローマン時代までの歴史的遺物を約25万点を収蔵していて、展示されているのは一部とのこと。

セキュリティを通ってすぐに大きなファラオの立像が4隅に立って見学者を迎える48号通路となっている。この大きな立像はラムセス2世の立像で左足を半歩前に出している。左足を半歩前に出すのは勇者の姿を表しているのだそうだ。

この博物館に展示されているものはすべて本物ですが、一つだけ偽物がありますと言ってガイドさんが説明を始めたのが、ロゼッタ・ストーン。
フランス人学者のシャンポリオンがヒエログリフを解読する契機となったものだが、本物は大英博物館に展示されている。
エジプト人にとってはこのカイロ博物館こそがロゼッタ・ストーンの居場所に最もふさわしいところなのではないか、さぞ悔しいことではないかと勝手に想像する。

通路や部屋など展示品の置かれている場所に番号が付いていて見学に便利になっているようだが、番号は順番にはなっていないようだ。

この奥の43号通路にあるパレットはなんとも興味深い。
BC3200年頃のナメル王のパレットで記録物としては最古のものとか。片岩製で表には上エジプトの白い王冠をかぶった王が敵をこん棒で打ち据えるところが浮き彫りにされており、ホルス神が押さえている敵はデルタ地方を表すパピルスの茂みの中にいるので、下エジプトを制定したことを意味しているとのこと。

パレットの裏は下エジプトの赤冠をかぶった王と上エジプトの旗持ち(上エジプトの各州を表している)や、首をちょん切られた多くの敵、捕虜が豹のような怪物をロープでつないでいるところとか、牡牛が敵を踏みつけているところなど5000年以上も前に作られたとは思えない表現の豊かさに驚かされる。

続いて正面に大ギャラリーがあり、奥に巨大な座像が見えるが、48号通路に戻り、時計回りにジョセル王の坐像やメンカウラーの3柱神などを見て突き当たりを右に折れると初期王朝時代からグレコローマン時代まで歴史順に展示されているホールと通路が続いている。
書記坐像、クフ王の小さい座像や有名なラーホテプとネフェルト夫婦像など
を見て2階に上がる。

ツタンカーメン

2階の通路にはガラスケースに入った高さ2メートル以上の大きな厨子が3つ並んでいる。ツタンカーメンのミイラは金箔の施された4重の厨子、石棺、3重の人型ひつぎに覆われ厳重に守られていたとのこと。
ミイラの内臓を保存するカノポス壷や壷を入れる厨子などを見た後、黄金のマスクなどが展示されている特別展示室に入る。

写真などで何度も見ているツタンカーメンの黄金のマスクだが、本物を目の前にすると荘厳な感じにうたれる。ミイラを納めた黄金の棺、黄金のスカラベの胸飾やハゲワシ姿の女神を表わした胸飾などの装飾品や副葬品豪華さに圧倒される。

特別展示室を出て通路を進むと金箔で装飾されたツタンカーメンの王座があり、背もたれにはアテン神の下で睦みあっている若いツタンカーメンと王妃の姿が描かれていてほほえましい。

さらに進むとヤマイヌの姿をしたアヌビス神、等身大の2体の王の立像などなど、ウシャプティ像と言われる死者の代わりに来世で農作業をする小人形などの小物を含めると2000点以上の副葬品があの小さなツタンカーメン墓に埋葬されていたとは驚きである。

ミイラ室

ツタンカーメンを見た後は、別料金のミイラ室の見学となる、ミイラ室はミイラの変質を防ぐため厳重な湿度管理がされ照明も薄暗くなっている。
全部で11体のミイラが並んでいるが、ラムセス2世のミイラは生前を思わせる威厳に満ちた感じである。

全身に包帯が巻かれたもの、包帯がはがれているものなどあり様々だが、ミイラは褐色がかった色をしているものだと思っていたら、1体だけ色白のミイラがある。後でガイドさんに聞くとミイラの作り方に色々な方法があって塩を使う量により色白になるのだそうだ。

ミイラ室の見学が終わってフリータイム。2階ではツタンカーメンの展示以外にも各部屋にたくさんの大小の副葬品が展示されているが、見て回る時間がない。

エジプトに来る機会は無いかも知れないと思うと、この旅行中にもう
1回見たくなり、最終日のバザール見物をキャンセルして博物館に来たいと
申し出ると、添乗員は当然にいい顔はしてくれない。
他の国ならOKをだすこともあるが、エジプトでは空港で落ち合うにしてもタクシーは値段交渉ごとなのでアラビア語が分からないと心配だとなかなかOKをださない。安全第一、無事にツアー参加者を日本に連れて帰ることが仕事だから無理もない。交渉は長引きそうだ。

カイロのホテルはエジプト旅行ならではの5ツ星、インターコンティネンタルで、3連泊と豪勢だ。
部屋に入り少し待つとキャリーバッグが届いたが、シリンダー式の錠が開かない、部屋係に電話しても時間が悪いのか出てこない。

しかたなく添乗員に来て貰い、いろいろ試してみても駄目なので、添乗員に連れられてコンセルジェのところに持って行く。
ベルボーイらしき人が道具箱を持ってきて、ペンチで一ひねりすると簡単に錠は壊れる、ついでにベルボーイデスクで1ドルの錠を買う。