ホテル出発は8時半、テヘランの市内観光が始まる。
市内観光は絨毯博物館、サーダバード宮殿、考古学博物館、ガラス・陶器博物館と宝石博物館などであるが、今日は絨毯博物館、サーダバード宮殿をみて、午後にはシラーズに移動することになっており、考古学博物館などは最後の日に予定されている。

ガイドさんは40才くらいの男性でイラン入国から出国までのスルーガイドである。日本にも何回か来ているそうで、日本語の発音も日本人と変わらないくらい上手い。歴史用語など語彙が少し不足するようだが、真面目が服を着ているような感じなので丁寧に説明してくれそうだ。

テヘランは4000m級の山々が連なるアルボルズ山脈の南山麓にあり、1100万人が暮らす活気と喧騒の大都会である。
テヘランがイランの首都になったのは、意外に新しく1796年、ガジャール朝の時代である。
ガイドさんによればテヘランの気候は、夏は39~40℃、冬は-2~3℃くらいで、今年の夏は42度の日があったそうだ。でも、海抜1400メートルの台地にあり、湿気が少ないのでテヘランの40℃は日本の33℃くらいの感覚らしい。

絨毯博物館

ホテルから絨毯博物館までは距離的には10~15分だが、テヘランの交通渋滞はひどくて到着時間の予測が出来ないとガイドさんがこぼしていたが、順調に走って博物館に着く。

この博物館はパーレビ2世夫人、ファラーの命令で1978年に作られたもので、建物は上空から見ると絨毯を織る台の形をしているそうだ。展示されている絨毯はファラーが財力にものを言わせてイラン各地や海外から収集したペルシャ絨毯の名品である。
ペルシャ絨毯は100年以上ももつと言われているが、ガイドさんの話では、この絨毯博物館で1番古いものは、約500年前のサファヴィー朝を興したエスマーイール1世の時代のものとか。
世界で1番古いペルシャ絨毯は2400~2500年前のもので、南シベリア、アルタイ山中のバジリク古墳で発見された大きさが2㎡くらいの絨毯だそうだ。厳寒の地に凍結保存されていたためほぼ原型をとどめていてサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館に所蔵されているらしい。模様にアケメネス朝時代の特徴があるのだそうだ。この絨毯博物館には複製品が展示されているとのこと。

イランではカスピ海からペルシャ湾まで、昔から何処にでも絨毯があり、エスファハン、タブリーズ、ケルマン、コムなど産地ごとに風合い、模様など特徴があると言う。絨毯は通常、まず図案を描き、図案に従って作業をすすめていくが、面白いのは遊牧民の絨毯で、図面などなく祖先から受け継いだ図柄を頭の中に記憶して織っていくとガイドさんの説明。

イランで絨毯が発達したのは、イラン高原は乾燥地帯で弾力性のある羊毛がとれること、ザクロ、ぶどうの葉、胡桃の皮など染料となるものが沢山あることで、赤はイチジクの木につく虫で、虫を沸かすと赤っぽい色が出るのだそうだ。

絨毯の品質はラジで表され、6.5cmあるいは7cmの間に結び目がいくつあるかで決まり、例えば結び目が60あれば60ラジで、数が多いほど高級な絨毯なのだそうだ。イランの家庭で使われる一般的には30ラジで、100ラジの高級絨毯もあるらしい。
模様の基本は真ん中にメダリオンという模様があり、周りをフィールドが囲み、ボーダーやコーナーで縁どりする構図で、ペルシャ語でガビガビという模様の枠をつなげていくのだそうだ。

展示されている絨毯を見ていくと、イスラム伝統のアラベスクやメヘラブ模様、糸杉ガビガビ模様があり、庭、四季、人物や物語をモチーフにした芸術品がある。

ペルシャガーデン模様

水が流れ、真ん中に池、周りに木、花、鳥が描かれてガーデン風景。

4季の絨毯

春、夏、秋、冬が描かれ、真ん中にアケメネスのキュロス大王が座り、楔形文字が描かれ、角にはモーゼ、キリストなど預言者やイランの有名な詩人が描かれている。

人物模様の絨毯

イランの有名な王など顔が40人も織られた絨毯には番号がついていて番号から名前が分かるようになっていて面白い口髭がぴんと伸びたアッパーズ、髭面のナーデルが描かれているものなどがある。

物語の絨毯

ササン朝時代の物語を描いたもので、バハラームが狩をしており、女性に1つの矢で2箇所を当てると結婚してもよいと言われ、1つの矢で足と耳に当てた様子が織られているユーモラスなもので、鳥のガブガビも織られている。

このほか、バジリク古墳で発見された絨毯の複製、リバーシブルと言うか裏から見た方が綺麗に思えるシルク絨毯、4分の3が行方不明の大きな絨毯、金糸が織り込まれた絨毯など門外漢でも結構楽しい。

サーダバード宮殿

テヘラン北部、アルボルズ山脈の麓にある広大な敷地にあるパーレビ1世の夏の離宮であった。16の宮殿があるが、造り方は昔のペルシャの宮殿に習い、1つ1つの宮殿は小さいのだそうだ。
そのうちの1つが王の住まいであった緑の宮殿で、300kmほど離れたザンジャンという所でとれる緑色の大理石を使っているとかで落ち着いた雰囲気である。
控えの間、象嵌の部屋、鏡ホール、ダイニング、バスルールなどを見て回る、外見に比べて内部は豪華絢爛と言った感じで、バスルールにも最高の大理石を使っているそうだ。76kの金製の果物入れは贅沢の極みである。

シラーズはテヘランの約600km南方にあり、イラン航空の国内線で1時間半弱である。9月1日にイラン北東部のマシュハドで墜落事故があり90人の死者が出たという報道があったばかりなので、今回の旅行で唯一心配事が国内線での移動である。
マシュハドの事故はツボレフであったが、シラーズ行の機種を見るとFOKER100。
オランダ製らしいという人もいて、どうなることかと思案しているうちに無事、シラーズに着く。

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