ワタダーゲ

ハタダーゲの南側にある円形の仏堂、クワンドラングルのなかではいちばん大きくて目を惹く建築物である。土台の直径は40m近くありそうだ。
2層の基壇からなっており、1層目の基壇に上る入口はハタダーゲの入口と向かい合っている北の入口だけのようだ。
ムーンストーンで裸足になり2層目の基壇に上ると東西南北に4つの入口があり、ここにもそれぞれムーンストーンとガードストーンが置かれている。その階段を上がると仏陀坐像が4体、それぞれ東西南北の入口に向かって座禅を組んでいるように見える。そして、その4体の坐像に囲まれるように真ん中に小ぶりな仏塔がある。平べったいので上の部分は滅失したらしい。

7世紀頃にはここに小さい仏堂があったらしいが、現在のワタダーゲを建てたのはパーラクマ・バーフ王、当時は屋根があって仏歯が保管されていたそうだ。後にニッサンカ.マーラ王が改修、北の入口や壁の模様など手を加えたと言われ、壁の模様をよく見ると象や人間らしきものもあって微笑ましい。

ランコトゥ.ヴィハーラ

クワドラングルの遺跡を後にして、しばらく進むと大きな仏舎利塔が見えてくる。ランコトゥ.ヴィハーラと言うダーガバである(インドでストゥーパと呼ばれる仏塔がスリランカではダーガバと言うんだそうだ。日本ではご存じのとおり卒塔婆である)
ランコトゥのランはシンハラ語で金、コトゥは尖塔の意味だそうだ。当時、このダーガバの尖塔は金で覆われていたので、ランコトゥ ・・・ 金の尖塔のあるダーガバと呼ばれていたらしい。
アヌーラダブラにあるダーガバをモデルにしてニッサンカ.マーラ王が建てたと言われ、高さは50mもありそうだ。
何でこんなに高いものを造るのと言うことだが、遠くからでもダーガバを見られるようにするためだそうだが、王がその権力を誇示する目的もあったのでなないだろうか。
階段を上り、200m四方もありそうな敷地に立ってみると、改めてその巨大さに圧倒される思いである。さらに煉瓦を積み上げたダーガバの半球形の曲線の美しさにも驚かされるが、この巨大なドームの重さを支える構造はどうなっているのか気になるところである。

近づいてみると壁のあちこちに小さな祠が作られ、なかには10体ほどの仏さんが祀られ、お供えもの捧げられていて微笑ましい。

ガル. ヴィハーラ

ランコトゥ.ヴィハーラ見物の後、10分ほど走って車を降りポロンナルワ観光の目玉の1つ、ガル. ヴィハーラに向かう。ガル. ヴィハーラは岩石寺院という意味だそうだが、もともとは ウッタララーマ(北の僧院?)と呼ばれていたらしい。
近づいてみると、左から仏陀坐像、石窟、仏陀立像と仏陀涅槃像が並んでいるようだ。大きな岩を真っ二つに割って手前を切り崩し、残った奥の壁のなかから仏陀像を切り出した感じである。

坐像

仏陀坐像の高さは4.6m、静かに目を閉じて瞑想している姿は奥深い優しさを感じさせ、坐像の後背のまわりには塔が聳えたりして何処か天上の風景を思わせる。
隣の石窟の中にも仏陀坐像があるが、入口に金網が張ってあるので仏陀の表情はよく分からない。

立像

仏陀立像の高さは7m、でも圧迫感はない。仏陀の立像でよく見るのは右手を上げ、左手を下に垂らす姿であるが、この立像は胸のところで両手を組んでいる。静かに閉じられた目もとや両手を組む姿から深い慈悲が伝わってくるようだ。
釈尊の立像であると言う説もあるが、1番弟子のアーナンダが涅槃に入った仏陀を悲しんでいる姿だとする説もあるらしい。そう言えば顔は悲しげに見えるし、両手を胸にあてる姿はいたましくも感じられる。釈尊が涅槃に入ってしまい、悲嘆にくれる1番弟子の姿だとする説が分かり易い。

涅槃像

全長14m、釈尊が今、まさに涅槃に入ろうとするところである。顔はふくよかで優しそうであり、肩から腰にかけての体の線は肉体のような滑らかな肉付きを感じさせる。また、右手をのせて頭を支えている枕は少し沈んでいるように見え、そば殻入りの枕を思わせる。
足の裏を見ると左足が僅かに引かれている。ダンブッラの石窟寺院で見たのと同じでる。

仏陀像の前には煉瓦の土台らしきものが残っている。ガイドの説明ではここには僧院が建っていたそうだ。煉瓦の土台はその跡で、僧院建てたのはパーラクマ・バーフ王、王はこの僧院で僧侶の教育を行い堕落した僧は追放したらしい。

ランカティラカ. ヴィハーラ

4時半過ぎに駐車場に戻り、次の見物に向かう。南に5~6分戻って停車、ガイドの後ろを歩いていると真っ白いダーガバが見えてきた。ガル. ヴィハーラ見物の前に見たランコトゥ.ヴィハーラよりは一回り小さい感じである。キリ. ヴィハーラと言うんだそうだが、キリはミルクの意味らしい。パーラクマ・バーフ王の奥さんのサバドラ妃(?)が建てたと言われているそうだ。
キリ. ヴィハーラの周りには小さな塔がいくつかあるが、それらは貴族や高僧の墓で仏舎利塔ではないとのこと。
キリ. ヴィハーラの南側に奇妙な形と言うか、前面の左右にでっかい塔が聳える建築物がある。ランカティラカ. ヴィハーラと言う煉瓦造りの仏塔だそうだ。塔の高さは18mほどだが、もともとは今の倍くらいの高さがあったらしい。
中に入ると正面に大きな彫像のようなものがある、裾と足もと以外は人物の輪郭が何となく分かる程度に損傷が甚だしい。ガイドによれば仏陀立像だとのこと、高さは13mもあるらしい。
仏陀立像の脇を奥に進むと立像の後ろに薄暗い通路がある。今は蝙蝠が飛んでいるが、当時は僧侶たちが瞑想しながら行ったり来たりする瞑想の通路だったそうだ。
入り口に戻りながら、左右の壁を見ると幅20cmほど階段が付いている。とても前を向いては上れない感じである。壁を背にして横向きに上るしかないようだが、こうすれば仏陀に尻を向けずに上れると云うことらしい(?)。

駆け足で見回った感じだが3時間半ほどがあっと言う間に過ぎていた。ポロンナルワは単に遺跡と言うより仏教都市遺跡という感じである。当時、タイやビルマ(ミャンマー)などから仏教僧がポロンナルワにやって来たと言われているが、南アジアの仏教の中心がこのポロンナルワであったらしい。
ホテルへの帰り道、田んぼのあちこちに孔雀がいた。スリランカでは何処にでも孔雀がいるようだ。