アルコバサ観光

沈黙の回廊

王達の広間の出ると美しい中庭が目に入ってくる、その中庭を囲んで沈黙の回廊と呼ばれる回廊がある。この回廊はディニス王(1261~1325)の時代に建てられたヨーロッパでも最大級のシトー派建築だという。回廊にはゴシック様式の交差状アーチが天井まで伸びて美しい。2階部分は16世紀の初期に増築されたものでごてごてのマヌエル様式にはなっていないという。

食堂と厨房

北側回廊に面して食堂と厨房が並んでいる。
食堂で目につくものが3つ、1つはやたらに広いこと、2つ目が壁のなかに造られている朗読壇で、修道士達は朗読壇で読まれる聖書を聞きながら無言で食事をとっていたという。この朗読壇は繊細な作りで修道院で最も美しい造作だと言われているとのこと。

3つ目は食堂の壁に作られた狭い入口、修道士の食事は当初、粗末なものであったが、領地が強大なものとなり、富が集積するに従い質素な生活は忘れられ食事も贅沢になり肥満者が増えてきたので、狭い入口を通らなければ食堂に入れないようにしたそうだ。

隣の厨房は18世紀に改修されたものだそうだが、一時は1000人もの人が修道院にいたそうで、これらの人々の賄いをしただけあって大理石の調理台は8tもあり、一度に7頭の牛を丸焼き出来たというかまどや35mもある巨大な煙突など当時の様子が目に浮かぶ感じである。厨房の水場はアルコ川から水路を引いて流れるようになっていて、灌漑に優れた修道士達にはお手の物だったと思われる。

寝室、参事会堂

東側回廊の隅の階段を2階に上がると、そこは修道士達の共同寝室になっていた部屋で、だだ広っい空間のなかで1000人もの修道士達が簡易ベッドで寝起きしていたという。

いびきや歯軋りの激しい人も大勢いたと思われるが、修道士達は安眠できたのだろうか。もっとも、後には仕切りがつくられたそうだ。

1階に降りて参事会堂に入る。この部屋はアルコバサ修道院のなかで教会に次ぐ重要な部屋だそうで、修道士のなかのえらい人達が集まって修道院の日常の運営について議論したという、また定期的に聖ベルナルドの戒律を聞く所でもあった。

部屋には聖ベルナルド像など修道士が作った聖人の像が飾られているが、それより、たまたま、この町の出身の有名な歌手が舞台の準備をしていて、ガイドさんがうまく話しを付けてくれて、彼の美声を聞かせて貰うおまけがついてアルコバサ修道院の見物はおしまい。

アルコバサ~オビドス

アルコバサから次の観光地、オビドスへも30分ほど。

添乗員によるとオビドスは城壁に囲まれた可愛い町で、ディニス王の婚約者のイザベルがイスラム教徒の要塞であったこの町をたいへん気に入り、王は婚礼の祝いに王妃にこの地を贈ったのだそうだ。以来、代々の王妃に受け継がれオビドスは王妃の直轄地となったという。

ディニス王の妃イザベルはアラゴン国王ペドロ3世の王女で優しく慈悲深い人であったらしい。言い伝えによると、王妃は城からパンやお金を持ち出し貧しい人々に分け与えたそうで、ある日、それを咎められた王妃が、‘かごの中にはバラの花が入っています’と答え、ディニス王がかごの布をとって中をのぞいたら、お金やパンが王妃の言った通りバラの花に変わっていたという。作り話にしても、民の暮らし向きにも心を痛める心優しい人柄を偲ばせるエピソードでいかにもほほ笑ましい話だ。

オビドス観光

城壁のすぐ近くのホテルで昼食をとった後は3時まで、1時間半ほどのフリータイムになる。

南門にあたるポルタ・ダ・ヴィラという城門から町に入る。城門の中にはアズレージョで飾られた祭壇があるが、もともとはこの城門はイスラム時代の正門だという。

町に入ると、通りは2本に分かれていて高い方の通りがメインストリーのようだが、通りというより路地の感じで、小さな土産物屋やカフェなどが軒を連ね観光客で溢れている。

買い物には興味がないのでぶらぶらと歩いていると、一番奥まった所にあるイスラム時代の城砦であったポウザーダに着く。このホテルから城壁に上がる道がある筈だと、もたもたしていると中庭で書き物をしていた女性がホテルの横のモジャモジャと草が茂っているところが城壁への上り口だと案内してくれる。

城壁の上にでると、1mほどの幅の道がついている。片側は城壁の外壁だが内側には手すりとかなんにもないし、道もでこぼこ、その上けっこう高いところにある。踏み外したらたいへんだと思いながらそろそろ進んでいると、道幅が少し広くなって周りの景色を見る余裕が出てくる。

城壁の周囲は1.5km、その狭い空間に白い壁にオレンジの屋根が並び、庭にはブーゲンビリアが咲き乱れる光景は中世がそのまま続いているような感じである。
家の壁をよく見ると、黄色や青で縁取った家があちこちにみられるが、何のしるしなのか添乗員に聞くのを忘れてしまった。

それにしても、10月半ばというのにオビドスは真夏のように暑い、で、早めに入口の近くにあるインフォメーションセンターに戻って椅子に座らせて貰う。