ムンク美術館は地下鉄で中央駅から2つ目なのですぐ近くだ、いつもの癖で隣の席の人に、ムンク美術館に行きたいのだがと尋ねると、トォーエン駅で出口まで案内してくれて、すぐ右手の小路を200mも歩くと美術館の裏に着くので近道だと教えて貰う。

トォーエン駅で降りる人かと思ったら、地下鉄に引き返して行ったのでわざわざ下車して教えてくれたようだ、なんとも親切なノルウェー人に感謝々々。

美術館はムンクから遺贈された絵画1100点、水彩、素描4500点や版画15000点を所蔵し、1963年にオープンしたものだが、出光興産の寄付により改築、拡張されて1994年に現在の姿になっている。オスロの人が日本人に親切に美術館を教えてくれたのはこうした背景によるものかもしれない。

ムンク美術館では、昨年8月にムンクの‘叫び’などが白昼堂々と観客の前で強奪されたニュースが日本でも大きく報道されて驚いたりしたが、飛行場並みにセキュリティーを強化して、やっと6月18日から再開となっている。

セキュリティーを通って、チケット売場でカードを差し出すと、読み取りが出来ないと言われる、オスロのあちこちでこのカードで買い物をしたと言っても、窓口の若い女性は他の端末も試してくれることぐらいしか出来ない。現金は交通費程度の小銭しか持っていないので、しかなく中央駅に戻って両替することにする。ムンク美術館はサムスンのシステムのようだが日本のVISAカードを受け付けないとはとんでもないシステムだ。

再開を記念してムンクの自画像の特別展示が8月25日まで行われている。
入口を入った正面と左の部屋が常設展示で、‘叫び’、‘接吻’、‘声(夏の夜の夢)’、‘星月夜’、‘不安’、 ‘死の部屋 ’、‘汽車の煙’など。ムンクは‘叫び’を4点描いていて、展示されているのはムンク美術館のもう1点のようだ。違いは勿論分からない。

ムンクは油絵70点、水彩画、素描、習作100点以上の自画像を描いたと言われているが、案内書によれば今回の特別展はムンクの芸術家としてのアイデンティティを研究するに足る包括的な展示だと言うことだ。

また、案内書はムンクにとって自画像は芸術的実験の重要な部分で、過激な自然主義から象徴主義への発展を自画像においてたどることが出来ると説明している。

疎外と孤独、生と死、愛、女と男、性 などテーマの発展が自画像にどう表現されているかと言った難しいことは批評家に任せて、憂鬱な表情で一人レストランのテーブルにいる‘ワインボトルのある自画像’、正面を向いて自身のありそうな‘絵筆を持った自画像’、明るい色調で描かれた晩年期の自画像‘時計とベッドの間の自画像’、ムンクの端正な顔を描いた素描‘腕の骨のある自画像’‘コートと帽子の自画像’、‘壁際に立つ自画像’などを観て回る、なかに‘ボヘミアンの結婚式’などの絵もあり結構楽しむ。

見学者の中に、横たわったままで動く車イスを押して貰いながら30代の女性がゆっくりと絵を観ている。ヨーロッパの人はこうして障害を持ったひとも自由に絵を楽しんでいるんだと感心する。

ムンク美術館をみた後、ホテルに戻ってしばらく休憩する。大阪を出てから3週間近く、毎日歩いているので回復力がなくなり少し歩くとすぐ疲れる。このあとの観光予定は市庁舎、国立博物館とアーケシュフース城などであるが、ムンク美術館で海上自衛官から‘はるかぜ’と‘ゆうぎり’がノルウェー訪問中で市庁舎の裏側に停泊していると聞いていたので、市庁舎を見たあと自衛艦をみることにして、国立博物館とアーケシュフース城は省略することにする。