フリータイムになって急いで大聖堂に戻り、なけなしの聖書の知識を搾り出して身廊のモザイクを見ていく。旧約聖書の物語は右手の上段から始まり、右回りに聖堂内を1週した後、下段に移ってもう1週するようになっているようだ。

天地創造

始まりは天地創造の物語で、最初の2つは門外漢にはよく分からないが、混沌と、光が生み出される様子が描かれているようだ。

神は最初に水を2つに分けて天を造ったとされるが、次の場面では神の頭上に大空があり、下の半分には波打っているような水、上の半分には暗闇のような水が描かれている。水が上下に分けられて天がつくられた様子らしい。

続いて、神が大空の下の半分から海と陸地をつくり、さらに天の大空に太陽、月や星の天球をつくる様子が描かれている。昼と夜はここから現れることになる。

さらに、神が雉やペリカンなどの鳥や魚をつくっている様子が描かれ、牛、馬、ライオンなど動物がつくられている。
人間は塵から造られたそうだが、神の口と人間の顔が細い光線で繋がっているように描かれているのは、神の口から出る光で人間に命の息を吹きかけている様子らしい。

カインとアベル

エデンの園の物語に続いて左手の壁の真ん中あたりからはカインとアベルの物語である。
アダムとイヴの2人の息子、長男のカインと次男アベルが神に生贄を捧げている場面が描かれている。アベルは子羊を神に捧げたので神は満足し、その手から光線をアベルに降ろしている、一方、カインは木の実を神に捧げるが神は満足していないようだ。
次の場面はカインがアベルを山に誘い出し、こん棒を振り上げてアベルを殺している様子が描かれている。

シリア旅行した時、ダマスカスでガイドさんがカシオン山を指差し、あの山が人類最初の殺人が行われたところですと説明していたのを思い出すが、聖書の記述と史実がこのあたりで混じりあってくるようだ。
続く画面は、神がカインに地上を放浪者としてさまよう罰を与えているところ。

ノアの方舟とバベルの塔

上部の物語はカインとアベルで終わり、身廊の右手に戻って下部はノアの箱舟の物語から始まっている。ノアと家族が動物を方舟に乗せている場面が描かれ、このあと40日間大雨が降って大洪水となって人類が途絶えた後、ノアと家族や動物が方舟から降りている場面である。
ノアの方舟に続いては、人間が天まで届こうと高い塔を建てている様子が描かれている。神が怒って人間の言葉を混乱させたので、コミュニケーションが取れなくなりバベルの塔の建設は頓挫することになる。このバベルの塔はウイーンの美術史美術館のブリューゲルが有名である。

アブラハム

正面入口のアダムとイヴの物語の下段には、3人の天使の前で跪く老人が描かれ、続いて3人の天使にご馳走を振舞っている場面らしいので、この老人はアブラハムである。この時、天使からアブラハムは子供を授かると告げられたが、アブラハムは100才、妻は90才あったとか。

窓を挟んでソドムの炎上の場面があり、身廊の左側に移ると、有名なアブラハムが神に命じられて息子のイサクを生贄に捧げようとナイフを振り上げている場面が描かれている。直前に神はイサクを生贄にしてはならないと止めたそうで、神への忠誠心を試したものと言われている。

リベカ

次の場面では、ラクダに水を飲ませている娘と3人の男が描かれている。 3人はイサクの嫁を見つけて来るように命じられたアブラハムの下僕である。大切な水を3人とラクダにまで与えてくれた優しい娘はイサクの嫁になることを承知し、次の場面ではリベカがラクダに乗ってイサクのもとに旅立っていく様子が描かれている。
イサクとリベカとの間に双子の兄弟が生まれる、長男がエウサで次男がヤコブである。

ヤコブ

若者が弓で狩をする様子が描かれているが、これは年老いたイサクの願いをかなえるためエウサが狩をしているところ。次の場面ではヤコブがイサクから家督を譲られている様子が描かれているが、リベカは弟のヤコブの方が好きでエウサが狩りに出かけている隙にイサクからヤコブに家督相続を認めさせるように謀ったということらしい。
旅に出る男を家の中からリベカが見送っている様子が描かれているのが次の場面で、これはエウサの復讐を恐れたリベカが自分の実家に遠ざけておこうと、ヤコブを旅に出しているところ。
最後はヤコブが一晩中神と戦った後、神に祝福される場面で、身廊に描かれた旧約聖書の物語は終わっている。

側廊にはイエスの奇跡の場面が主に描かれ、イエスの生涯は内陣と翼廊に描かれているようだ。フリータイムが15分ほどしかないので、旧約聖書の物語を追っかけるのが精一杯、イエスの生涯を追えなかったのはちょっと残念。

この後、集合場所の駐車場に急ぐ。途中、土産物や店先でトリナクリアが描かれた陶器を写真に収める。トリナクリアはシチリアのシンボルマークとされ、3本の足(3つ岬を表す)を持つメドゥーサである。駐車場でコンカ・ドーロの景色をカメラに収めてモンレアーレ見物はお仕舞い。