アンマン~ジェラシュ

シリア、ヨルダン旅行の最終日である。午前中にジェラシュの観光をして、昼食後、アンマン空港に向かう予定となっている。ホテルを出発して40分くらい走り、小川が流れているところでバスが停まる。

ヤボク川といって、旧約でヤコブが神と闘って勝ち、イスラエルの名を授けられたという物語の舞台だそうだ。残念ながら、今は工場廃水で汚染された小さな川に過ぎない。
ヤボク川から20分あまりでジェラシュに着く。

ジェラシュ観光

ガイドさんによれば、ジェラシュが歴史に登場するのはBC4世紀、アレキサンダー大王以降のことで、AD1世紀、ローマ軍がこの地方を支配するようにまると、ジェラシュはローマの属領となり、ダマスカス、フィラデルフィアなどの10都市からなるデカポリスに組み入れられた。そして、隊商都市としてデカポリスのなかでも栄えた都市だそうだ。

AD129年、ハドリアヌス帝がここを訪れて以来、凱旋門を初め、アルテミス神殿、北劇場、競技場、西浴場等が造られた。全長3.5kmの城壁に囲まれた町は、東側が市民が暮らす住居、西側がアクロポリスになっている。

15の教会跡が発見され、モザイクも残っているが、殆どの教会は5~7世紀に建てられたもの。746年の大地震でジェラシュ全体が廃虚となったらしい。

凱旋門、競技場、劇場、フォーラム(アゴラ)、列柱道路、ゼウス神殿、アルテミス神殿、浴場とくれば、これは立派にローマである。パルミラやペトラなど今回のツアーで訪れた遺跡はメソポタミアやフェニキア文明とローマが混じり合っているか古代オリエントの痕跡を残しているが、このジェラシュは100%ローマ遺跡である。

ガイドさんの説明を聞きながら、順番に見ていく。

ハドリアヌス帝の凱旋門

皇帝ハドリアヌスがここを訪れた記念に造られた。中央のアーチとその両側に小さなアーチからなっている。

競技場(ヒポドローム)

160m×65m、競馬や馬車競技などが行われた。ベンハーの戦車競争が行われたあの舞台である。BC2世紀のもの。
11時からローマ時代の戦車競争を模したショーが行われるそうで、料金はUS

15$、何人かは参加されるようだが、自分はもう少し遺跡を見たいのと、博物館があるらしいので、ショーは遠慮申し上げる。

南門

城壁に囲まれた市街への入口、中央のアーチとその両側に小さなアーチからなっている。ハドリアヌス門と同じ様式。

フォーラム(アゴラ)

80×90mの楕円形の広場。楕円形はローマの広場では珍しいらしい。
円柱も柱頭が羊の角のように渦巻きになっているイオニア式で、ローマ遺跡では珍しいとのこと。床は敷石で舗装されて、中央の基段には像が置かれていたという。

ゼウス神殿

フォーラムの左上にある。破壊が激しくて柱が7~8本残っているだけで、柱の残骸が辺りちらばっている。基段は41×28m、高さ15mのコリント式柱で囲まれていたらしいが全体は想像できない。AD2世紀に再建されたものが現在に遺跡、最初の神殿はAD1世紀の初めに建てられたという。

列柱道路(カルド)

フォーラムにから南北に伸びているのがカルド、ジェラシュのメインストーリートで長さ800m。かつては両側にそれぞれ260本の円柱、計520本が並んでいた。
敷石はオリジナルで轍の跡が残っている。道路の下に平行して地下水路が造られていたことが敷石の隙間から見える。ここにもローマの高度な土木技術がみてとれる。

列柱は現在、左右に70本ほどのコリント式、イオニア式の列柱が復元されていそうだ。

四面門

フォーラムから150mほど歩くと十字路に出くわす。南北に走るメインストーリートが東西の道路(デクマノス)と交っている所で、4本の柱が立ちドーム型の屋根を支えていたそうだ。

カルドを南に行けばフィラデルフィア、北はガダーラ。デクマノスをずっと東に行けば地中海に出る。

ニンファエム

さらにカルドを進むと、道路に向かって半円形に大きく開いた噴水がある。祭儀や園芸に使われた。ギリシャ神話に出てくるニンフの噴水である。AD2世紀末のもの。

アルテミス神殿

ジェラシュの遺跡の中で1番大きいのがアルテミス神殿で、ジェラシュの守護神アルテミスに捧げられた。アルテミスはオリンポス12神の一人、アポロンと双子の兄妹で狩と豊穣の女神。英語ではダイアナ。

中庭が160×120mあり、神殿の基壇も40×23mと壮大なものであった。神殿はもともと2重の列柱で囲まれていたが、現在残っているのは前面の1部で、南北に11本、東西に6本、13mの柱が立っている。神殿はジェラシュの最盛期AD2世紀に着工されたが、一部未完成となっているとのこと。

耐震構造になっていると言われ、丸く削られ柱の底が地震で揺れてもエネルギーを吸収するらしい。

ガイドさんがキーを間に挟み、われらの代表が柱を押すと微かにキーがゆれるのが分かる。

北劇場

アルテミス神殿の傍にあるのが北劇場、ローマ劇場で、客席は14段、2000人収容した。演劇や詩の朗読、罪人を動物と闘わせたりした。BC2世紀の中頃の建築、7世紀の地震で建物部分が壊れた。

ビザンチン教会

15のビザンチン教会が建てられていたが、保存状態がよいのが、聖ジョージ教会、洗礼者ヨハネ教会、聖コスモス教会。床のモザイクが残っている。

南劇場

高台の道を戻り、フォーラムの真上辺りにあるのが南劇場。BC2世紀のローマ式劇場で3000人収容できた。席は予約制だったらしい。音響効果が抜群で現在もイベントに利用されているそうだ。

博物館

競技場の傍に博物館の分館のような所があり、のぞいてみるとアルテミス神殿の復元模型や神殿の崩れた柱頭や梁の一部が展示されている。模型をみるとアルテミス神殿の壮大さに改めて感心させられる。柱頭や梁には柘榴やぶどうなどの模様が鮮やかに刻まれておりローマ人の装飾好きがよく分かる。

博物館の本館はフォーラムの右手の丘の上にある。一部屋だけの小さい博物館でジェラシュの遺跡から出土したコインなどの出土小物が展示されている。こまごまとした遺物が展示されている。モザイクが目にとまるていど。ここも撮影禁止とは驚きだ。

アルテミス神殿と南劇場をもう1回見物、競技場のショーを遠くからちょっとだけ眺めてジェラシュ遺跡の見物は終わり。

10日間のツアーはあっと言う間に終わった感じですが、中身の濃いツアーでもありました。アレッポ博物館とダマスカス博物館が頭の中で混線しています。

次はメソポタミア文明の本丸に、と思ってもブッシュがグチャグチャにしてしまったので生きている間に行けそうもありません。

北九州、米子、千葉から参加されたご夫婦にはアットホームで楽しい旅にして頂きました。広島と千葉の美女2人にも色々と楽しい話を聞かせて貰いました。
元気印の添乗員さんは、添乗の仕事は満点でした。通訳の仕事も大変でした、2~3分り難い所があったようですが一生懸命で合格点ですね。

皆さんに感謝、感謝。