博物館の見物を終えて昼食のレストランに向かう。
びっしりと家が立て込んだアンマンを見たので、ちょっと趣向を変えてお金持ちの家を見ていきましょうということで、途中、アンマンの富裕層が住むアブドゥー地区にまわる。ハリウッドとはいかないまでも、ペトラ風の家など大きな家が並びいかにもお金持と言った感じである。多くが新しいようだが、外国人も買えるらしい。

ガイドさんによれば、アンマンでは一般的に3寝室、キッチン、バスルームが3つあり、バルコニーが付いている180㎡くらいの家を買おうとするとUS20万ドル、レンタルする場合は賃料が年間US1万5千ドルくらいするそうだ。

1人当たり国民所得がUS2千ドルほどの庶民が手を出せるシロモノではない。アブドゥー地区の住民は1万5千人ほどで、貿易の仕事している人が多いとのこと。

昼食メニューは中華、飲物がいきなり高くなり、シリアでUS4$だったビールがUS6$になる。昨夜は弾みでビールを注文したが、今日はお茶で我慢する。

午後の観光予定はモーゼの終焉の地と言われるネボ山、床のモザイクが有名な聖ジョージ教会を見学した後、ペトラに向かうことになっている。1時前にレストランを出発、途中みやげ物屋によったりして、ネボ山に3時過ぎに着く。

ネボ山

バスを降りたところで、ツアーの皆からはぐれたらしい泣きべそ顔のお婆ちゃんに出くわす。ヨーロッパ人のツアーでも迷子は出るもんだとか、連れて行くわけにもいかないしなどと話ながら歩いていると、ヨハネ・パウロ2世がミレニアム聖年に訪れたのを記念する碑が建っている。教皇は3つの宗教が和解し、平和が訪れることを祈ったのだろうか。

近くに丸い大きな石が置いてあるが、ローマの共同墓地の上に置いてあったもので、修道院のドアーとして使っていたものだそうだ。

右手は石ころだらけの深い谷になっており、少し木が生えているような所がモーゼの泉だと教えて貰う。モーゼが杖で岩を叩き泉を出したというモーゼの泉はあちこちにあるらしい。

ネボ山からの眺望

さらに進むと教会の裏手にいたり、その横を歩いて行くと教会の正面に出る。その広場の端が展望台のようになっていて、左手に死海が見え、正面、手前の緑の帯が伸びているところがヨルダン川で、遠くエルサレム、ベツレヘム、世界最古の町エリコなどの風景が広がっている。

モーゼはイスラエルの民を引き連れてエジプトを脱出、長い放浪の末、この地にたどり着き、ここから神との約束の地、カナンを遠望して、120才の生涯を終えたと言われる。

十字架のモニュメント

広場には、棒に蛇が巻付いたような十字架が立っている。

ガイドさんによれば、聖書に書かれていることを表していて、なかなか約束の地に辿り着けないイスラエルの民は不平ばかり言うので、神が懲らしめに蛇を放つと、蛇に咬まれた民は病気で死んだりして苦しむようになる。モーゼが青銅の蛇を作り旗竿の先に掲げると民の病気が治ったと言う物語だそうだ。

教会

もともとAD4世紀、6世紀に建てられた教会があったが廃滅していた。12世紀にイタリアのフランチェスコ教会の修道士が来て教会の再建をしたが、その後

忘れられていた。20世紀の初めに再びフランチェスコ会の修道士がやって来て発掘と復興をはかり、現在の教会に至っているとガイドさんの説明。

教会の中に入ると、屋根は細い鉄骨のバラック、ホールには長椅子が並べられ、奥に祭壇らしきものがあると言った、如何にも簡素な造りとなっている。が、地下の床にあるモザイクには感激、狩猟から牧畜に進化していく様子が4段に分けて描かれている。

1番奥はライオンから牛を守っている様子、2段目には馬に乗って狩をしているところ、3段目は人が木陰に座って家畜の見張りをしているのだろうか、1番手前にはダチョウを紐で引っ張る黒人、しま馬とラクダを紐で操る若者が描かれている。

リアルで躍動感があり、これだけでこの教会を尊敬してしまいそうだ。

聖ジョージ教会のモザイク

ネボ山の見物の後はマダバの町に戻り、途中、モザイクの工房を見学して聖ジョージ教会に。ギリシャ正教の教会であるが、お祈りをするわけではないので、祭壇の右手にある床を取り囲む。

モザイクは15m×6m、6世紀の中ごろに作られたシリアからエジプトに亙る地図で、もとは200万個以上の破片でできていたが、今はシリア、レバノンの辺りは欠落し、75万個ほどになっているとのこと。

この地図で最も注目されるのはエルサレム、城壁に囲まれた亀の甲のような格好である。町はダマスカス門から2本のカルドが伸び、中央のカルドの中間点辺りにあるのが聖墳墓教会とのこと。

エルサレムの周辺にはベツレヘムやジェリコも描かれているが、面白いのは死海に注ぐヨルダン川で、死海に下る魚や死海から戻ってくる魚が描かれている。塩分が濃くて住む場所がなかったのだろうか。

モザイクの見物を終えて、庭で休憩しているとネボ山で迷子になっていたお婆ちゃんがグループの皆と一緒に教会から出てくる。無事に合流出来たようで、勝手ながら安堵する。

マダバ出発が5時半、ペトラまで3時間かかるそうだ。午後一杯観光してさらに3時間とは、厳しい。