ホテル出発は8時、今日はシュコツィアン鍾乳洞を見物、その後イストラ半島の港町ポレチュを観光する予定になっている。日本のツアーでは一番大きいポストイナ鍾乳洞を見るのが普通だが、世界遺産にこだわるこのツアーはシュコツィアン鍾乳洞を選んでいるらしい。

ヨーロッパではすでにバカンスシーズンに入っているので、スイスやオーストリア、ドイツなどのNOプレートの車が走っていて渋滞気味だが、9時半過ぎにシュコツィアンに着く。

10時になってシュコツィアン鍾乳洞の見学が始まる。見学は言葉によってグループ分けされ、英語のグループは我ら30名の他は5~6人という構成である。

観光センターを出発、道路を渡って林の中を300~400mも下ったところに洞窟の入口がある。その洞窟マップの前でガイドの説明が始まるが、ツアー専属のガイドではないので、添乗員の通訳を割り込ませるタイミングを与えて貰えない。でもって、半分ちょっとしか聞き取れない説明はおおよそ以下のようである。

スロヴェニアの南西部はカルスト地形のためたくさんの鍾乳洞があるが世界遺産になっているのは、このカルス地方にあるシュコツィアン鍾乳洞だけである。このシュコツィアン鍾乳洞の最も特徴的なものは川が鍾乳洞の中を流れていることである。

レカ川と云うその川はスネジク山(?)に源を発し、シュコツィアン村で地下に消え、このマップ上でみると見学コースの出口付近のVelika dolina(巨大な陥没窪地の意?)の辺りで鍾乳洞に入り約35kmも地下を流れて、最後はアドリア海に注ぎ込んでいる。

このレカ川の浸食によって峡谷や大きな洞窟、地底湖などが形成されており、シュコツィアン鍾乳洞の高低差は最大200mもある。
洞窟の中には鍾乳石やタケノコ石、橋、石灰段丘などすばらしい自然現象が見られる。見学コースは2つあるが、われわれは赤で示された峡谷コースを見学する。

シュコツィアン鍾乳洞の長さは約6kmであるが、その内の約3kmを1時間半ほどかけて見学する。洞窟内の撮影は禁止されている、などなど・・・・

さて、扉が開き、人工の取り付けトンネルを約50m進むと、高さが10m、幅30~40mほどあるかと思われる空間が現れる。

地震が来たら助からないなというのが第1感。壁の周辺を見ると、つららのように垂れ下がっている鍾乳石や地面から竹の子の様ににょきにょきと生えている石筍、また、鍾乳石が連なってバナナの房のようになっているもの、鍾乳石と石筍が合体して地上から天井まで柱のようになっているものもある。

鍾乳石は、炭酸カルシュムを含んだ地下水が天井から滲みし出して落下するとき方解石となって固まり、つらら状に垂れ下った石の棒であるが、1cm成長するのに100年以上、石筍はもっとかかると言われているので何十万年もの途方もない時の流れのなかで自然が作った神秘と云うことのようだ。

見学道を下って行き、行き止まりかと思ったら、また別の洞窟が現れる。この辺りはパラダイスと名付けられているらしい。
シュコツィアン鍾乳洞の中は年間を通して12℃くらいと聞いていたので、薄手のカーデガンをはおっているが、丁度いいようだ。

湿った歩道を滑らないように気をつけながら下りていくと道は大きくカーブし大きな洞窟が現れる。地の底まで来た感じで、ギリシャ神話でハデスが支配した冥界とはこんなところだったのではと想像する。

さらに、手すりにつかまったりしながら歩道を下り、教会のパイプオルガンのように鍾乳石が並んだ洞窟などいくつかの洞窟を通る。ガイドさんの説明がサイレント・ケイブと聞こえたので、この辺りの洞窟は沈黙の洞窟という名前が付いているようだ。

歩道が険しくなり階段を左右に曲がりながら下りていると川の流れが聞こえてきた、レカ川である。少し進むと、巨大な地下峡谷が現れる、その底をレカ川が流れているのである。川沿いを暫らく歩いていると、パンフレットなどでよく見る橋に行き当たる。幅1m、長さが14~5mのコンクリート製の小さな橋である。

地底からの高さ45m、手すりに掴っていても下を覘くと足が竦む思いである。橋の名前は‘サークヴェニク(?)・ブリッジ’と聞いたたが、聞き間違えかも知れない、この橋を作った人の名前らしい。

前面は今まで見てきた巨大な地下峡谷が広がっているが、振り返って後ろを見ると幅10mほどしかない割れ目のような峡谷となっている。レカ川は橋の辺りでカーブしながらこの峡谷に入って行く、洞窟マップで見たハンケ水路(Hanke channel)の入口のようだ。

橋を渡ると、レカ川に沿った歩道が少しずつ上りになっていく、呟きの洞窟?と呼ばれているのはレカ川のせせらぎがそのように聞こえるためだろうか。

ルドルフホールという大きな鍾乳石群がぶら下がり石柱の間に歩道が作られた洞窟、石臼を積み上げたように見える石灰華段丘などを見ながら、坂道をよいしょよいしょと登っていくと陽光眩しいシャバが見えてくる。
この出口の辺りがVelika dolina と呼ばれる巨大な陥没窪地で、切り立った断崖は100~150mはありそうだ。

さて、観光センターから洞窟の底まで下った分は、今度は登って取り返さなくてはいけない。添乗員に最後はケーブルカーがあるので、もう少し頑張ってと励まされながら急な坂道を登る。

1時間半あまりアップダウンして膝はガクガクとなっているが、天を突くような灰色の断崖と濃い緑に覆われた巨大陥没窪地の絶景が慰めて呉れる。