ブレッド城

リーフレットによるとブレッドの所領はドイツ皇帝ハインリッヒ2世(後の神聖ローマ皇帝)によって1004年に北イタリア、ブリクセンの司教アデルベロンに与えられたが、この時にはブレッド城は含まれず、1011年に追加された(皇帝が荘園や修道院を司教に与えたりしたのは諸侯の勢力を削ぐためであったようだ)

司教アデルベロン自身は300kmも離れたブリクセンに住んで、滅多にブレッド城を訪れることはなかったと言う。その後、お城は賃貸に出され、ついには売却されて持ち主が転々としたりしたので、見るべき家具や調度品はないらしい。

ガイドさんによると、城は小山の頂上を2段に切り開いた砦と言った感じで、中庭を囲むように城壁と建物が建っている。上の段が住居棟で牧師、城代や家来達が住み、下の段には納屋や家僕が暮らしていそうだ。

ともあれ、皆さんの後について急な坂道を上っていると日本人の観光客とすれ違う、旅先の何処でも見かけるハート形のバッジを着けた御一行様である。

城内に入る。中庭の真ん中の井戸についてガイドさんが説明しているのを聞き流し、そそくさと中庭の先端の展望テラスに進む。と、エメラルドグリーンの湖面に浮かぶ聖マリア教会が目に入る。

ガイドブックやポスターなどでよく目にするブレッド湖はこの角度から撮られたもので、この絶景があれば家具や調度品はどうでもよいと感激に浸っていると、グーテンベルグの印刷の実演を見ましょうと添乗員に急かされる。

グーテンベルグの印刷所

ブレッド湖に浮かぶ聖マリア教会やブレッド城などの風景を当時の印刷機で活版印刷の実演をする小さな工房である。我ら30人のご一行は部屋に入り切らず2階や階段に陣取る。実演は彫刻を施した版を印刷機にのせ、すき紙をセットしてハンドルを押すとブレッド湖に浮かぶ聖マリア教会が刷り上るというもの。オートマティックだと笑わせて呉れて、お仕舞い。

それにしても、ブレッド城で聖書を刷って普及に努めたとも思えないし、何でグーテンベルグの印刷機がここにあるのかよく分からない。 最近になって聖マリア教会やブレッド城などの風景をグーテンベルグの印刷機で実演販売すれば格好の土産物になると考えた商売なのだろうか。

礼拝堂

上の段の中庭に上がって礼拝堂に入る、こちらも30人が入るのがやっとである。祭壇にはいかにも現代的なオブジェのような聖母子像が置かれている。1000年祭の記念の地元の彫刻家が創ったものとか。右手の壁には聖ペテロが描かれた祭壇がある。聖ペテロは天国へ門の鍵を持つキリストの一番弟子なので威厳に満ちた風貌で描かれることが多いが、この聖ペテロは大工か漁師の好々爺のようである、もともとペテロは漁師だったそうなのでこちらが本物に近いのかも知れない。周囲の壁、天井にはフレスコ画がびっしり。

この後、フリータイムとなって博物館に入るが、見るべきものは無い。展望テラスから再びブレッド湖を見下ろし、遥か遠くのトリグラフ山などユリアンアルプスの絶景を楽しんで今日の見物はお仕舞い。

リブリャーナのホテルはローマ字1文字の珍しい名前である。ガイドブックではバルカン半島の国ではチップの習慣は特にないと説明されていたが、添乗員は枕銭は1€だと、当然のように宣う。

また、添乗員の曰くには、このホテルは日本人のツアーがよく使うホテルだとのことだが、夕食のバイキングはコンチネンタルの朝食のようで食べるものがない、さらに、シングルのベッドは寝返りをうつと床に転び落ちそうな狭さである。ずっと以前に安かろう悪かろうのツアーでひどい目にあったヴェネツィアのホテル以来である。