ギャラリー

ディアーヌ・ド・ポワティエの部屋に戻り細い通路を抜けてギャラリーと呼ばれる回廊に出る。
奥行きが60m、幅6mの回廊で、ディアーヌ・ド・ポワティエの橋の上に、カトリーヌ・メディシスが建設したもので、当時はこのギャラリーで華麗な舞踏会が催されたと言う。
このギャラリーの外観が橋の上に浮かぶ船を思わせ、シュノンソー城館の魅力を一層引き立てるものとなっている。

フランソワ1世の居室

最初に護衛兵の間に入った時は気づかなかったのだが、ギャラリーから引き返してみると廊下(ホール)の左右に部屋が並ぶプランとなっている。さっき見た護衛兵の間やディアーヌの部屋の反対側にはルイ14世のサロンとフランソワ1世の居室が並んでいる。部屋から部屋を通り抜け行かなくても各々の部屋に行けるわけだ。
ルネッサンス様式の傑作と言われる暖炉もさることながら、狩の女神アルテミスの姿をしたディアーヌ・ド・ポワティエの絵、同じような狩の女神アルテミスの姿をした女性(ガブリエル・デストレ?)や、最愛王と呼ばれ政治には無関心で女にうつつをぬかしたルイ15世が次々に寵愛したネール家の3姉妹が3美神に准えて描かれた絵などが飾られていて華やかである。

ルイ14世のサロン

この部屋で真っ先に目に入るのは暖炉の上の2つの紋章である。サラマンダーと白イタチが並んでいるが、サラマンダーはよく知られているようにフランソワ1世の紋章であり、白イタチは王妃クロード・ド・フランスのものである。王と王妃がシュノンソーを訪れて滞在したことを表しているとのこと。暖炉の横には豪華な額縁に縁取られたルイ14世の肖像画、左手の壁にはルーベンスの幼いキリストと洗礼者ヨハネが飾られている。このほかにも数々の肖像画が掲げられている。

カトリーヌ・ブリソネのホール(廊下)

階段はカトリーヌ・ブリソネが発案したと言われる例の直線階段で途中の踊り場で方向転換して2階に上るようになっている。現在からみればしごく当たり前のことだが、ラセン階段しか知らなかった当時の人々はその便利さにさぞ驚いたことだろう。
廊下の壁には6枚のタペストリーが掛けられているが、狩の場面が織られているのだそうだ。

5人の王妃の居室

カトリーヌ・メディシスの2人の娘と3人の義理の娘に因んで名づけられたもの。
アンリ4世とスペイン王ヘリペニの妃となった娘と、アンリ3世の妃となったルイーズ・ロレーヌなどの義理の娘などである。
大きな天蓋ベッドの左右の壁に掛けられているタペストリーはトロイ戦争、コロッセオの競技やダビデの戴冠などを表したものだそうだ。

カトリーヌ・ド・メディシスの居室

さて、カトリーヌ・ド・メディシス、フランソワ1世とクレメンス7世教皇との間で決められた政略結婚でフランソワ1世の次男坊(のちのアンリ2世)に嫁いだが、ロレンツォ・メディチの曾孫とはいえ商人の出ということでフランスでは不評であったと言う。
知性と教養、政治力にもあふれる資質を持っていたと言われているが、カトリックとプロテスタントが国を2分、30年間にも渡った宗教戦争には無力であったようだ。ことに、サン・バルテルミの虐殺事件では首謀者として疑われ決定的に評判を落としたと言う。この後はカトリーヌが外国人であったこともあって、あることないこと不幸の原因はカトリーヌだと非難されるようになったらしい。

この部屋のタペストリーは旧約聖書、土師記に出て来るサムソンの生涯を描いたものだと言う。
ベッドの右側には、愛の教育というコレッジョの絵が飾られている。この絵は、たしか、ナショラルギャラリーの西翼ギャラリーで見た気もするが、官能的な神話画である。

ルイーズ・ド・ロレーヌの部屋

この後、セザール・ド・ヴァンドームの居室やガブリエル・デストレの部屋を見た後、3階に上がる。
3階には1部屋、ルイーズ・ド・ロレーヌの居室がある。カセットの解説で聞いたように白い王妃と呼ばれた主が修道女に囲まれて祈りの日々を過ごしたところである。当時の状態で残っている黒と白の茨の冠やアンリ3世とロレーヌの頭文字を組み合わせた模様が描かれ天井に合わせて、この部屋は悲しみ沈み信仰にすがる雰囲気を復元しているそうだ。
暖炉の上の絵はキリストの荊冠を悲しむ人々を描いたものと思われる。

ディアーヌ・ド・ポワティエの庭園

城館の見物を終え、集合時間には余裕があるのでディアーヌ・ド・ポワティエの庭園をゆっくり散策する。
庭園の敷地はほぼ正方形で、東西と南北に十字の道が通り、さらに対角に2本の少し細い道が加えられ、8つの3角形の芝生が作られている。そして、その芝生はワタスギの渦巻き模様で装飾されなんとなく安らぎを覚えるものとなっている。また、4つの道が交差する中央には噴水が配置され、全体として幾何学模様のフランス式庭園となっている。広さは約120,000㎡だそうだ。

玉仕上げされた柘植が芝生の周りにぽつぽつ、赤、白のチューリップが彩りを添えているが、春浅しという感じである。