夜の女王のレリ-フ (古バビロン(BC1750年頃)、高さ49.5cm・幅37cm 焼成粘土)

目鼻のくっきりした近代的な美人である。たしか、ルーヴルでも同じようなレリ-フが展示されていた。
‘夜の女王’と題されたこの曲線美の裸女性はもともとは赤で着色されていたらしい。メソポタミアの神の特徴である角のついた頭飾りを被り、丈と正義のリングを持っている。彼女の羽根が下に伸びているのは冥界の女神であることを表していると言う。足の先が獰猛な鳥の爪となっているのを見るのは初めてだが、2頭のライオンの上に立っているので彼女は愛と戦いの女神、イシュタルだと見て間違いがない。
(ルーヴルでもこのレリーフとそっくりのイシュタル女神を見たが、たくさん出土したらしい)

儀式の描かれた奉納板(ウルのキパルク出土、初期王朝(BC2500年頃)、縦22cm・横26cm、石灰岩)

上段では裸の神官が長衣を着た3人の信者の前に立ち、椅子に座った神に献水をしており、下段には同じく裸の神官が女神官と捧げものを持つ2人の信者を従えて、神殿の前で献水しているところが描かれている。ルーヴルの奉納板と同じ様に真ん中に穴があいているのは壁の突起に差し込んで固定するためと考えられている。

銅製レリーフ(怪鳥アンズー)(ウルク近辺のニンフルサグ女神の神殿出土、BC2600~2400年頃、幅2.59m・高さ1.07m、銅合金)

怪鳥アンズーである。たしか、シリアのダマスカス国立博物館でも見たが、この獅子頭の鷲(アンズー)も不気味である。銅合金のシートを打ち付けて形作ったそうだが、この時代には銅はオマーンやイランから輸入されシュメールで広く使われていたらしい。もっとも、金属の作品は、その後、分解されるか、溶かして再利用されたので、これほど大きな金属の作品が残っているのはめずらしいそうだ。

乳搾りの様子を描いたレリーフ(アル・ウバイド出土、BC2500年頃、高さ24cm・幅119cm、石灰岩、瀝青)

右側には牛の後ろでは乳を搾っている様子が描かれ、真ん中は牛乳を甕に入れて運んでいるところで、左手ではバターを作っているようである。おそらくバターが最初に作られたと思われる様子を実際にレリーフで知ることができるのは興味深い。

地母神像(シリア、シャガル・バザール出土、ハラフ期(BC5500年頃)、高さ8cm、粘土)

ハラフ期にはこのような裸の女性像がたくさん作られたようだ。豊満なおっぱいが見事であるが、出産中の地母神らしい。

Room57

少年を貪る牝ライオン(ニムルド、アシュールナシパル2世宮殿出土、縦10.35cm・横10.2cm 象牙、金箔、ラピスラズリ)

アシュールナシパル2世宮殿から出土したが、こうした象牙彫刻は明らかにフェニキュアのもので、多分、家具に装飾として取り付けられたものである。ニムルドに持ち込まれたのはアシュールナシパル2世の地中海方面への遠征時の戦利品あるいは貢物だったと思われる。

今、宝石の腕輪やブレスレットと着けたアフリカの少年が牝ライオンに襲われているところで、背景には百合とパピルスが描かれている。当時は金箔が貼られラピスラズリで象嵌される高価なものであったらしい。


4時過ぎに博物館を出る。11時半頃に入ったので、途中のカフェの時間30分を引いても4時間ほど、ほとんど歩きっぱなしだが、メソポタミアを満喫していささか興奮気味である。人間、身勝手なもので、火山噴火のことはすっかり忘れてしまっている。

ホテルに帰ってテレビを見ていると、JALから電話があり明日20日のフライトはキャンセルになったこと、21日以後のスケジュールは未定であるが、とにかく21日と22日の乗客名簿に名前を載せてありますという連絡である。それから、JALには電話は殺到していてなかなか繋がらない状態なので、何かあったらJALからまた連絡を入れるとのこと。一人ぼっちで放り出されているわけでもないことが分かってほっとした気分である。

20日のフライトはないことがはっきりしたので、取りあえず3日だけ延長しておこうとフロントに下りて行くと、シングルで空いているのはワンランクグレードの高い部屋しかない、1泊120ポンドだと言われる。インターネットで予約した料金よりも4割も高いレートで、弱みにつけ込まれた感じだが野宿をするわけにもいかない。