展示室4は「コルサバードの中庭」と呼ばれ、サルゴン2世(在位BC722~705年)が建設した新都市、ドゥル・シャルキン(サルゴンの要塞の意)の宮殿からの出土した人面有翼牡牛像や壁面浮き彫り彫刻が展示されている。コルサバードはドゥル・シャルキンの現在の地名である。

BC2000年紀の初期にチグリス川の上流に興ったアッシリアは、凡そ1000年の雌伏の時を経て、新アッシリア時代に全オリエントを征服して一大帝国となった。サルゴン2世はその新アッシリア帝国の絶頂期の王の1人である。
彼が建設した新都市は7つゲートがある周囲約7kmの壁に囲まれ、その北西の高台に造られた宮殿は、面積が10ha、200もの部屋がある壮大なものだったらしい。しかし、サルゴン2世はBC705年に遠征中に亡くなり、跡を継いだ息子は都を元のニネヴェに戻したためドゥル・シャルキンはほとんど使われぬまま見捨てられ、やがて砂に埋もれてしまったと言う。

「コルサバードの中庭」に展示されているものは、おもに、1843~44年にフランス人のポール・ボッタが宮殿の北西部を発掘した出土品である。発掘はその後、1852~55年にも行われ、1928~35年にはシカゴ大学オリエント研究所が大規模な発掘を行っている。

人面有翼牡牛像

ラマッス(Lamassu)または、シェドゥ(Shedu)と呼ばれる守護霊。
展示室2にBC3000年紀前半のものとされる人面牡牛像が展示されており、また、アレッポ国立博物館にもBC2500年頃のエブラから出土した人面牡牛像が展示されていたりするので、この地域では人面牡牛像は広く世界の基を守るとものと信じられていたらしい。

人面は王冠のような帽子を被り、2対の角を持ち、長い髭が胸元まで伸びて威厳のある顔である。人面部分だけが丸彫りになっていて、胴体と翼は深浮き彫りとなっているが、胴体は上部の壁を支える役割もしているようである。
像の足の部分をよく見ると足が5本ある、これは横から見る時に歩いているように見せる工夫なのだそうだ。なお、ラマッスはメスでシェドゥがオスらしいが、髭面のラマッスはどうみても牝牛には見えない。

「コルサバードの中庭」には、展示室2からの通路に1対と、中庭を挟んだ対面の通路の両側の壁に1対、中庭の奥の方に1体の人面有翼牡牛像が展示されている。
展示室2からの通路に展示されているのが、ポール・ボッタが発掘したもので王宮の中庭の「ファサードm」を飾っていたものだと言う。
中庭の奥の1体は1852~55年の発掘で出土したもので、ドゥル・シャルキンの都市壁の「ゲート3」に置かれていたらしい。
対面の通路の両側に展示されている人面有翼牡牛像は、説明プレートによれば、オリジナルはシカゴのオリエント研究所にあるということなので、そのコピーのようだ。

英雄像(ギルガメシュ?)

宮殿、玉座室の外壁(ファサードN)に取り付けられていた深浮彫の巨像である。像は神と王権を象徴し、像が発する静かな力が王宮を守護し、王の権力の継続性を確かにするものと言われている。
英雄像は、あご髭は胸まで伸ばし、膝丈の短い衣服を身につけており、右手に湾曲した形の武器を持ち、左手でライオンを抱きかかえている。英雄の前では、さすがのライオンも子猫のように小さく見え、前脚をぎゅっとつかまれて身動きもできないようだ。

「コルサバードの中庭」では英雄像は人面有翼牡牛像の隣に展示されているが、ドゥル・シャルキンで配置されていたのと同じように並べているのだと言う。
玉座室に入るには中庭から、この高さ5.52m、幅2.18mの英雄像や有翼人面牡牛像が見下ろす通路を通って進まなければならないので、王の威力に圧倒され、畏怖の念を懐かせるに充分である。
なお、この像は‘ギルガメシュ像’とも呼ばれているが、メソポタミアの伝説上の英雄に擬えられただけで、根拠があるわけではないようだ。

祝福を与える精霊像

1852~55年の発掘で、もう1体の精霊像と一緒に出土した。人面有翼牡牛像が置かれていた都市壁「ゲート3」の内側通路を飾っていた。
右手に松ぼっくりを持ち、左手には小さなバケツのようなものを提げている。このバケツのようなものから湧き出た聖水が松ぼっくりを通して通路を通る人々の上に撒かれ、祝福を与えると言うものである。 高さが4mもあるこの精霊像は、同時に守護霊でもある。この像は肩の辺りから2対の翼が生えているが、アッシリアの神話には人面牡牛や鳥面人、有翼人、人面有翼牡牛など超自然的な創造物がたくさん出て来る。こうした超自然的な力が都市を守ってくれるものと信じられていたらしい。

サルゴン2世と高官、家臣たち

サルゴン2世の宮殿には王座室に面した「栄誉の中庭」など大小いくつかの中庭があり、その周壁は浮彫りで飾られていた。その浮彫りは2kmの長さに及ぶものであったらしい。
「ファサードL」にはサルゴン2世と高官や家臣たちの行列の浮彫りが飾られていた。

サルゴン2世と高官

王は高い釣鐘形の帽子をかぶり、丈の長い衣服とマントを身につけ、右手に権力を象徴する長い杖を持っている。高官の方は、頭にはヘアバンド状の頭飾りをつけ、長衣の上に毛皮を巻きつけているようだ。

家臣たち

王に続いて従う家臣たち、前を行く人は長い髭を生やしているが後ろの人には髭がないが、身分の違いを表しているのだろうか、それとも宦官なのだろうか。
続いては2人の人物が狩猟用の馬車を運んでいるようで、前の人が支えているのは車輪や人を乗せる部分で後ろの人担いで運んでいるのは、馬につなぐ部分らしい。その戦車の後には馬ていが馬を引きながら行進している、横から見ると1頭のように見えるが4頭である。
行列の最後は長椅子や皿鉢を掲げた人々が続いているので、これは饗宴の準備がととのっていることを表しているものと思われる。

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