レバノン杉の輸送図

新アッシリアの歴代の王たちはシリアやレバノン、パレスティナ方面を盛んに攻略し、これらの地域を支配下に収めようとしたが、それはこの地方が交通の要所であるとともに、メソポタアはない貴重な物資の供給地であったからだと言われている。
王たちはシリアや地中海沿岸地方を征服すると貢納させて物資を調達、アッシリア本土に新都、新宮殿を建設していた。
特に、森林のないアッシリアでは、レバノンの山岳地帯に生育する良質の杉材は宮殿造営には欠かせないものであったと言う。

このレバノン杉輸送図はレバノンの山から切り出した木材をアッシリアに運ぶ様子を4つの場面に表している。
最初は山から杉の木を切り出している風景、次いで海岸で船に木材を積んだり、結び付けている様子が仔細に描かれている。(船は、のちヴァイキング船のように船首と船尾が高く巻き上がり、舳先には馬首の飾り、ともには魚の尾っぽの飾りが付けており、アッシリア人の装飾感覚が興味深い)
海上輸送では場面いっぱいに何隻もの船がオールを漕いで進んでいる様子が描かれており、船の間では魚、亀、海蛇、カニなどが泳いでいて何とも賑やかである。
最後は船が港に着いて荷下ろしをしているところ、さらに要塞に向けて運搬している場面である。
このレバノン杉輸送図はアッシリア文明を最初にヨーロッパに紹介した有名なものだそうで、ヨーロッパ人はさぞ驚いたことだろう。

山羊を抱いた高官

王座室を挟んで「栄誉の中庭」の反対側の「中庭m」のファサードを飾っていた浅浮き彫りで、サルゴン2世の宮殿を飾っていた浅浮彫のなかでも最も出来の良い作品の一つとだと言われているそうだ。
高官は右手に蓮の花を持ち、左手で子山羊を抱いている。子山羊はこれから犠牲として神に捧げられるのだろうか。前を歩く人物は左手にけしの枝を持ち、右手を挙げて祈りの姿をしている。髪の毛やひげの規則正しい渦巻文の配列、縁に縫い取りのある衣服と毛皮の上衣、花飾りの付いたヘアバンドなどの細部がていねいに彫られていて、なるほど最も出来の良い作品だと言われているのが納得できる。

狩猟図

宮殿の北西の隅にあった小さな建物の壁からはたくさんの浅浮き彫りが出土したが、狩猟場面を表す浮彫もその1つである。
サルゴン2世が馬車に乗り従者を従えて野外に狩りに出かけ、森の中で野生鹿や鳥、兎などを矢で射たり、獲物を運んだりする様子が刻まれている。
この浅浮き彫りは、森の中でサルゴンの従者が鳥に向かって矢を放とうとしているところである。

けしの花を持つ精霊

この浅浮き彫りも狩猟図と同じ小さな建物の壁に刻まれていたもので、様式化された木を挟んで2人の精霊が向かい合うように立っていた。精霊は左手にけしの花を持ち、祈りを捧げるように右手を上げている。様式化された木は王に与えられた神の支えによって成就された世界の調和を表わすものと言われている。慈悲深い精霊は生命の木を守護するものであった。

貢ぎ物を運ぶメディア人

サルゴン2世に征服されたメディア人が、自国の服を身に付け、模型で象徴される城砦を明け渡し、貢物としてりっぱな馬を連れて行くところである。

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